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ゆうき!
【青春 恋愛小説】

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第八話-5

 

    ***


三年前。
私が高校二年生で、魁が中学二年生の頃の物語。
当時の私は、太ってこそいなかったけれど典型的な『キモオタ』でした。
とはいえ、いじめられていたわけではなく、そこを魁に助けられたというわけでもありません。
そもそも高校と中学じゃ、いじめがあったところで魁が知るわけもないですが。

「すいません」

コミケ(夏や冬に東京で行われる大きなオタクイベントと捉えてもらえれば)帰りの電車。
魁が、なんの前触れもなしに私に話しかけてきた。
位置関係を話しておくと、私が座席に座っていて、魁が私の目の前に立っている。といったところ。

「言いづらいんですけど、下着見えてますよ」

全然言いづらくなさそうに、そんな指摘をされてしまう私。

「別に構いません」

断っておくと、下着を見られても困らないという意味ではない。
私だって一介の女子高生なわけで、それくらいの羞恥心はある。
ではどういう意味かといえば、魁が言った『下着』が、私が持っていた袋に描かれている『ひたぎ』というアニメキャラクターの名前に聞こえたためだ。
つまり、魁は「下着が見えてますよ」と言ったつもりでも、私には「ひたぎが見えてますよ」と聞こえたわけで。
アニメのキャラが丸見えですよ、といったオタクへの偏見の言葉に聞こえたわけで。
好きな物を否定されれば誰だって不快にはなるでしょうけど、私は特にその傾向が強いみたいで(後に魁に指摘されて気付いた)。

「気にしないで。恥ずかしいことだとは思っていないので」

「思ったほうがいいですよ。女の子なんですし」

「は?女の子がオタクじゃいけないとでも?」

後から考えれば噛み合っていない会話。

「オタク?いや、あなたの趣味はどうでもいいんですけど」

魁は、開いている私の両足を閉じる、というトンデモ行動を実行してきた。

「なっ、なにし、て……あ」

そこで私はようやく気付く。
魁が指摘してくれたのはひたぎではなく、下着……パンティのことだったのだと。
勘違いやら足を触られた恥ずかしさやらで顔を真っ赤にし、俯く私。

「あ、ありがと……」

「気にしないでください。自分は、正義の味方ですから」


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