第八話-3
「優紀。全力を尽くせよ」
「はい。精0.5ご杯、頑張ります」
なんだ精0.5杯って。
精一杯の半分か。
努力しろ!
「キッチンはひとつしかないからね。先攻後攻、どうする?」
「私は先攻がいいです」
「そう?じゃあ譲るわ」
「ありがとうございます」
先攻が優紀。
後攻が傍芽。
審査員が子どもであるハーモニーちゃんということを差し引いても、後のほうが口の中に味が残っているから勝ちやすいだろうな。
ましてや傍芽の料理とくればなおさら。
なぜ優紀は先攻を選んだんだ……。
「ハーモニーちゃん。しばらくあっちでお話しよっか」
優紀が作り始め、それを傍芽が監視(?)しているのを横目に、俺はハーモニーちゃんをすぐ隣の居間へ連れ出した。
「カイ。ユーキとラヴァー?」
ラヴァー?
えっと、恋人とかそういう意味だっけ?
「うん」
「手、繋いだの?」
「うん」
「キスしたの?」
「……うん」
最近の子はませてるって本当だったんだね。
おじさん悲しいよ。
「●●●●したの?」
「ハーモニーちゃん!それはダメ!」
「ユーキの●●に●●したの?」
「やめろぉぉぉ!」
ハーモニーちゃんは純粋無垢な良い子です。
ハーモニーちゃんは純粋無垢な可愛い子です。
「ハーモニーちゃんは、オムライス好き?」
話題を変えなければ。
「オムツプレイ?」
「待ってハーモニーちゃん。わざとだよね?」
「噛みました♪」
「わざとだぁぁぁ!?」
結局某作品のネタを披露してしまう俺たちだった。
なんか、ごめん……。
「それで。真面目な話、オムライスは好きなのかな?」
「オムライスは好きです。でも、ハンバーグのほうがもーっと好きです」
どこかの引越し屋のCMみたいな言い方をされた。
ハーモニーちゃんの年齢で知ってるとは驚きだ。
「マミーが、いつもチーズをのっけてくれたよ」
「チーズハンバーグか。俺はチーズ苦手だけど、杏子がよくやってたな」
「そうなの?焼くときにわんわーん!って鳴いて、ちょっとうるさいよね」
「うん……?」
焼くときにわんわーん?
擬音にしては妙に犬みたいな……。
「ってそれチーズ違いだから!」
アンパン焼いてる怪しいおじさんとお姉さんに怒られるわ!