第七話-1
優紀。
半年ほど前に自殺しようとしていたところを引き留め、今は一緒に暮らしている少女。
彼女との仲が、戦友(なんじゃそりゃ)から友達へとランクアップした。
というか元より、友達みたいなもんなんだけど。
その友達である優紀の『心中を前提に』友達発言から三日後。
「お久しぶりです!小田原魁!十七歳!優紀、さんとは、心中を前提にした友達付き合いをさせてもらっています!」
俺は、優紀のご両親に挨拶をしていた。
どうしてこうなった。
学校帰り、優紀が「私の実家に遊びに行きませんか?」なんて言うものだから、快く承諾したのだけれど、いざ行くとご両親がいて(共働きだったはず)、挙句優紀が「彼は魁さん。挨拶をしておきたいそうです」なんて言うものだから、流れで挨拶をしたという次第である。
「えっと……」
ご両親は困惑している。
そりゃそうだ。
心中を前提に友達になるやつなんて早々いないだろう。
「優紀。えっと……何?友達?」
「はい。魁さんは友達ですよ」
「恋人じゃ、なくて……?」
「恋人じゃなくて、友達です」
「そ、そう……」
ご両親が気にしていたのはそっちか!
いや、それにしても。
優紀って、両親にも敬語なんだな。
「優紀。お母さんたち、少し魁くんと話しがあるから、部屋に行っててくれる?」
「はい」
すたすたと、優紀は言われるがまま部屋へと行ってしまった。
俺を一人にしないでくれ!
「ごめんなさいね、魁くん。変な子で」
「え?な、なにが、でしょう?」
「優紀の友達のこと、聞いてる?」
「友達、ですか……?十年も友達がいないってことなら、聞いていますけれど」
「そう。なら話しやすいわね」
何やら久しぶりにシリアスなシーン?
「長い間、ずっと友達がいなかったでしょ?だから、接し方がわかってないんだと思うの」
「うむ」
優紀父がしゃべった!首肯しただけだけど。
「だから、やり過ぎちゃうこともあれば、その逆もあるのよ」
「はぁ」
「優紀は友達って言ってたけど、魁くんはどうなの?友達って関係」
「俺は……僕は、恋人に、なりたいです」