第七話-3
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「ぐほっ!?」
まるでお腹を殴られたかのような痛みを感じ、俺は目を覚ました。
「さぁて。言い訳を聞きましょうか」
「んー……?」
寝起きはいいほうなんだけど、優紀が何を言ってるのかわからない。
「優紀、おはよう……」
「おはようございます。それで、どうして私を抱きしめていたんですかね?」
「おー……」
そんなことに怒っていたのか。
「寝ぼけて?」
適当な言い訳をしてみる。
しかし優紀は、そんなことで納得するような女ではなかった。
「ではこれを見てください」
と。
勝手に俺のタンスを開けて、なぜかそこに入っていたデジカメを取り出した。
「優紀さん。それはなんでござんしょ」
「デジカメです。デジタルカメラ」
「それは見りゃわかる。なんでそんな物が俺のタンスの中に入ってんだよ」
俺はデジタルカメラをタンスの中に入れた覚えはない。
そもそも持ってないんだけど。
「いつも寝る前にセットしているんです」
「セット?」
「はい。私が寝ている隙に、魁さんが私にいやらしいことをするんじゃないかと思って」
ようは隠し撮りしてたと?
言い換えれば盗撮してたと?
夫婦間でも犯罪らしいからな、それ。
「この中に、魁さんの真実が隠されています」
その口振りだと、どうやら中身は見たらしいな。
抱きしめたのは寝ぼけてじゃなくて、故意にしたことだからな。恋だけに。
ドヤぁぁぁ!
「あんまり上手くないです」
地の文にツッコまれた。
「認めよう。俺は優紀を抱きしめたくて抱きしめた」
「うぇ、あわ……」
顔を赤くして狼狽える優紀。
「俺は男なんだ」
「な、なんですか改まって……知ってますよ」
「自殺しようとしたお前を助けたのは、多少なりとも下心があったからだ」
実を言うと、俺が今まで救ってきた(言うほど大袈裟なことではないけど)人たちというのは、その九割が女性なのである。高齢者も含めてではあるんだけれど。
「下心があったから助けた」
「あ、あの時は、色々思うことがありましたけど……今となっては、その……ありがとう、ございます」
「よし。じゃあ優紀。俺の人生半分やるから、お前の人生も半分くれ」