第六話-1
「魁さん!愛ちゃんですよ愛ちゃん!」
いきなり何をわけのわからないことを言ってるんだ。
「あの、魁さま?こちらの殿方は……」
「ああ……」
ふ……ついに杏子のことを話さなければならない時がやってきたようだな。
「こいつは星渡杏子。見てのとおりの『男』で、お前と、お前らと同じくこの家に居候してる馬鹿だ」
もしかしたら感付いていた者もいるかもしれないが、今説明したとおり、星渡杏子の性別は生まれた時からずぅぅと『男』なのである。
「酷いなぁ魁くん。ボクはこれでも、頭脳派なんだよ?」
「ほう。なら1と1を足したら何になる?」
「そんなの簡単だよ」
そう言い、杏子は指を一本、また一本立てて答えを導きだした。
「2、だろうにゃー」
ドヤ顔された。
小学校低学年でも解ける問題に指を使うってどうなの。
ちなみにこいつ、二十三歳である。
「なまら、すごい」
「そうだろうそうだろう!ボクはやればできるなんだーにゃ!」
「そこの銀髪。杏子を甘やかすな」
おっと。
こんな漫才をしている場合じゃなかった。
「杏子。その子、どうしたんだ?」
「ん。愛くんかい?いやー実は北海道に遊びに行ってたんだけどさー」
一ヶ月もですか。
長すぎる。
「夜中にブラついてたから、連れて帰ってきちゃったにゃー」
「…………」
シーン。
きちゃったにゃーじゃねーよ。
「にゃ、にゃんさん?まさか誘拐……」
「違う違う。ボクは行き場のない愛くんに、魁くんよろしく『ボクと幸せになろう』と言ってあげただけさ!」
いや、俺は『幸せにしてやる』とは何度も言ってるけど、頭に『俺と』を付けたことはねーよ。
……多分。
「そ、そんな!にゃんさんは魁さん一筋だと思ってたのに!」
「いやいや優紀くん。ボクの魁くんに対する愛は、一生ものだよ」
「じゅるり」
涎を垂らすなそこの二人(優紀と観音)。
「さて。魁くん……お前のハーレムメンバーを紹介しろー!」
なんでいきなりキレてんだよ。
ハーレムでもないし。
「結城優紀。永遠の十七歳です」
「優紀くんはいいよ。いやしかしあれだね。まさか優紀くんも十七歳教の人間だったとは」
永遠かはともかく、実際に十七歳だからな。