第六話-5
「愛。一緒にお風呂に入ろう」
「極光波でもくらって死んどけ」
いつまで罵声モードなの俺の妹。
「あの、愛ちゃん。そろそろ落ちついてください」
「うぜぇよ。自分の胸でも揉んでろや」
「……う、ひっく……」
優紀が泣いた!
中学生に泣かされた!
「魁さま」
「ああ。この子、こっちが本性なのかもな」
「あの方はとんでもない物を盗んでいきました。あの子の良心ですわ」
どこかのとっちゃんみたいに言うな。
「うぇ〜ん!ユーキが泣いてるぅぅ!」
ハーモニーちゃんまで泣き始めちゃったよ。
どうしてくれんのこれ。
「魁さま……アトハガンバッテクダサイ」
思い出したかのように外国人アピールをして部屋へと逃げる観音。
「てめぇ、なんで生きてんの?」
「愛。そういう口の聞き方はダメだ」
俺の心がもたない。
「んじゃあとっととメシ作れ」
全然言うこと聞いてくれない。
早くバッジ8個ゲットしなきゃ!
「リアルなんてその程度の価値しかねぇんだから。杏子様以外は這いつくばってろ」
杏子に対する忠誠心半端ねーな。
お、そうだ。
俺は杏子に電話をかける。さっき出たばかりだから、まだ空港にすら着いていないはず。
「てめぇ、メシ作れっつったのに、誰に電話してやがんだ?」
「杏子」
「なまら、お腹すいた」
途端に大人しくなった。
『にゃっほー。杏子さんはただいま人助け中で電話に出られません。おっぱいの発信音の後に、名前とスリーサイズを言いなさい。おっぱい!』
どんな応答メッセージだよ。
「愛は世界一可愛い俺の妹だ」
ピッ。留守電のメッセージはこれでいい。
「なまら、ありがとう。お兄さま」
お兄ちゃんからお兄さまになった。
昇格したのか?
ともかく。これで愛の本性はなんとか抑えられる。
これからもずっと、こんな妹と助け合いながらも生きていくのだろう。
完。
「って何勝手に終わらせてるんですか!こんなエンディング迎えたら読者ならぬ勇者の方々から苦情がきますよ!」
だって俺と優紀の仲、まったく進展しないし……。
もういっそ愛ENDでいいや、とか思っちゃったり。
「それはそうと……そろそろ空腹感が半端ない」
杏子のせいでハーモニーちゃんはカレーライス作ってくれてないし(今は泣き疲れて眠ってる)。