第六話-3
俺は優紀一筋で、優紀はぺたんこだけど、それだけだ。
他はきちんと成長している。お尻とか。
いい尻してるよなぁ。
「な、なんか寒気が……」
「こほん。それで立川さん、だっけ。どうしてこの馬鹿に着いてきたの?」
「なまら、惚れた」
「ちなみに君、いくつ?」
「なまら、中学一年生」
犯罪だー!
同意を得ていても犯罪だー!
「アイ。なまら、って、なに?」
「なまら、可愛い」
「『なまら』っていうのは北海道弁でね。『すごく』とかそういう意味なんだ」
「へぇ。じゃあ北海道名物の『なまらーめん』も、すごいラーメンってことなんですね」
それは違うだろ。
生ラーメン、であって、
なまらーメン、ではない。
いや、もしかしたら少なからずそういう意味合いは含まれてるのかもしれないけど。
「立川さん。ご両親は?」
「おいおい魁くん。レディに対して失礼だろう」
「なんでだよ」
お前に連れ去られてきたのではないかと不安になった。ただそれだけのこと。
「なまら、いない」
「えっと。立川さん。北海道の人って、口癖のように『なまら』って言うの?」
「なまら、言う」
「そうなんだ……例えば?」
「なまら、扇風機」
すごい扇風機って意味かな。
きっと温風機としての機能もあるに違いない。
「なまら、ゲーム」
すごいゲームって意味か。
いわゆる神ゲーというやつか。
「なまら、かっこいい」
杏子のほうを見て言う立川さん。
かっこいいか?美少年って感じではあるけど……。
「というか愛くん。嘘はダメだよ。なまらゲームとか、なまら扇風機、みたいな使い方はしないよね」
「なまら、そう」
「…………」
なにこの銀髪。疲れる。
「なまらは『すごく』って意味は合っても、『すごい』って意味はないはずだからね」
そうなのか。
そんな雑学はどうでもいいんだけど。
「愛ちゃん。標準語で話せますか?」
「うっぜ話しかけんなぺちゃぱい」
「魁さん……泣いてもいいですか……」
「なまら間違えた。今のは標準語じゃなくてヤンキー語」
なんだヤンキー語って。
そしてどうしてそのふたつを間違えた。