第五話-4
「むしゃくしゃしてやりました。誰でもよかったんです」
「無差別殺人の犯人みたいに言うな」
「……言わなきゃダメですか?」
「ああ。大事にならずに済んだからいいものの、俺がもし警察に連絡してたらどうしたんだよ」
「あ……」
そこまで考えていなかったらしい。
やはり推理作家の才能はないようだ。
ついでにファンタジー小説の才能も。
「あ、あの、伏線ってことで、今は言わなくてもいいですか?」
どうしても言いたくないらしいな。
「ちなみにいつ頃言ってくれる予定?」
「えっと、第七話くらい?」
具体的すぎる。
うーむ……まぁ話してくれると約束してくれるなら、別にいいか。
「わかった。その代わり、七話でちゃんと話せよ」
「はい!」
とてもメタな会話だった。
と、会話を終えてふと振り返る。
「うわっ!?」
少女がいた。
観音とは対照的な銀色の髪。
背丈はハーモニーちゃんより高い。
「水銀燈みたいな子ですね」
具体的なキャラ名を出すな。
しかも銀髪しかあっとらん。
この子は赤いワンピースだし。
「どうしたの?」
腰を曲げて少女の瞳を覗き込む。
「UJO、4〉XE」
「え?」
何?なんて言ったの?
日本語ではなかった。外国人……?
観音とハーモニーちゃんに続いてまたですか。しかも今度は日本語通じないタイプの子みたいだし。
「なまら、うるさい。そう言ったの」
「…………」
流暢な日本語だった。
さっきの記号みたいな言葉は何だったんだよ。
「ご、ごめんなさい。図書館では静かに、ですよね」
「わかればいいの。気をつけて」
去っていく銀様。じゃなくて銀髪少女。
「なぁ優紀」
「なんですか?」
あの銀髪少女とは、また近いうちに会いそうだな。
そう思ったけど、言葉にするのはやめた。
「いや。やっぱなんでもない」
***
「改めてごめんなさい」
電車を使って家に帰ると(自転車は置いてきた)、早々に優紀と観音、それと図書館の外で待機していて一緒に帰宅した傍芽に謝られた。
「無事だったからいいよ。んで、母さんは?」
てっきり先に帰ってると思ったのだが、家には誰一人としていなかった。