第五話-3
「そうですよ。全部私が考えました」
あっさりと認める優紀。
「だろうな。たった2ページで解決しちまうなんて、お前には推理作家の才能はないみたいだ」
「そんなことはありませんよ。推理作家の才能はなくとも、ファンタジー小説くらいは書けます」
「ほう」
やけに自信たっぷりだな。
まだ何か裏があるってのか?
「六人の誘拐犯役が、実際にいないなんて言ってませんからね」
「なんだと?」
「今呼び出しますから、ちょっと待ってくださいね」
そう言って手を差し出された。
「なんだこの手は」
「ケータイ。観音に預けているので、ないんです。貸してください」
「図書館での携帯電話の使用は禁止だ」
そんなわけで貸すわけもなかった。
「貸してくれないと連絡できないじゃないですか!」
「知るか。お前が図書館を選んだんだろ。携帯電話が普通に使える建物なら、貸してたさ」
多分な。
「なんでですか!プラチナむかつきます!」
「他作品のキャラの口癖をパクるな」
「メタルむかつきます!」
「頭を変えればいいってもんでもないからな」
「プラむきます!」
「なんだプラむきますって」
「ブラ脱ぎます!」
「図書館では静かにしろ」
今さらなツッコミだった。
さっきから周囲の人から「うっせーよ」みたいな視線を投げかけられているんだよね。
「そもそもお前、ブラ付けてんの?」
「…………(爽やかな笑み)」
「ごめんなさい」
今の笑顔は怖かった。
身の危険を感じたね。
「で。六人の誘拐犯役とやらは誰だったわけ?俺の知ってるやつ?」
「はい。六郷さんです」
傍芽かよ!
しかも『六人』って六郷の『六』と関連付けてるだろ!
「…………」
さっきかっこよく電話したのに、まさかすぐ近くまで来てたのか?
いやしかし。傍芽が今回の狂言に加担していたなら、ハーモニーちゃんのことを知っていたのも頷ける。
まさかあれが伏線だったなんて……。
「…………」
まぁ、どうして俺が朝飯食べていないのを知っていたのか、という疑問は残るのだけど。
そのへんはあとで傍芽本人に聞いておくか。
「それで?動機はなんだ」