第四話-1
母さんも観音も出かけているようで、とりあえず拾った女の子を家まで運んできた。
おんぶして。
とても軽かった。
「魁さん……どうするんですか、この子」
俺の部屋。
女の子はずっと眠ったまま、あるいは意識を失ったまま、ぴくりとも動かない。
「まさか誘拐してくるなんて……」
「いやお前現場にいたろ」
冗談はともかく。
本当にどうしたもんか、だよな。
俺の親に相談して、それから警察に届けてもらう。
そこまではいいとして、問題はそこからだ。
この子の親が見つかったら、まぁ普通に考えて帰されるよな。
んー。でも子どもを捨てるような親だし、ろくな神経はしていないだろう。裁判沙汰になるかも。
最悪また捨てられる、という可能性もある。
孤児院に預けられるかもしれない。
「う……ん……」
考えていると、女の子がゆっくりと目を開いた。
「ん……?」
ぼーっとした様子で俺と優紀の顔を交互に見る女の子。
「わかります?」
優紀が人差し指を立てて左右に振るのを、女の子は眠たげな眼で追いかける。
「マミー……ご飯……」
女の子は優紀にガバッと抱きついた。
マミー。お母さん。
寝ぼけているようだ。ぺたんこな優紀が母親に見えるなんてな。
「魁さん。今とても失礼なこと考えませんでした?」
「こんな状況で考えるか」
考えたけど。
ごめんなさい。
「う……?マミー、おっぱい、小さくなった……?」
「…………」
謝るんだ女の子!今ならまだ間に合う!
「あ、れ……?マミーじゃない……お姉ちゃん、誰……?」
「えっと、優紀っていいます」
自己紹介してる場合か。
「ユーキ……?マミーのフレンド……?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんですけど」
「朝はブレッド?」
「白いご飯ですかね」
「赤といえばブラッド?」
「炎ですかね」
いやいやいやいや。暢気に漫才してる場合か。
「俺は魁。君、名前は?」
「カイ……?」
「名前、言えますか?」
「うー……フラン……」
「フランちゃんですか」
「じゃない……レミリア……」
「レミリアちゃんですか」
「でもない……レティ……」
「レティちゃんですか」
「でもなかった……」
名前間違えすぎだろ!