第四話-9
手慣れた動作でパイナップルを切り、あっという間に店でパックになって売られているような大きさにまでしてしまう傍芽。
俺はトーストを食べ終え、皿を流しに置く。
「お前、トーストの上にパイナップル乗せるわけ?」
「むしろ乗せないことがないね」
「食後のデザートとして食べてたり?」
「デザート?ふふん。甘いよダーリン。パインはご飯に振りかけて食べるし、味噌汁の具にもいいし、お刺身にもなるんだよ」
パイナップルのふりかけ。
パイナップルの味噌汁。
パイナップルの刺身。
そんなの聞いたこともないぞ。
「しかもパインは性行為にも使える!」
「使うな」
食べ物を粗末にするな。というより、そんなことに使うなよ。
そんなやり取りをしていると、テーブルの上に置いていた携帯電話が振動した。
「ダーリン。ケータイの振動って、妙にいやらしいと思わない?」
「思わない」
三年も会わないうちに、随分と変態になったな。
とりあえず変態は放っておくとして。
着信。
相手は優紀だった。
「どした?」
『魁さま!あの、あの……』
ん?観音?
なんで優紀の携帯電話で電話してくるんだ?
『優紀さんとハーちゃんが……!』
ハーちゃん?
ハーモニーちゃんのことだろうか。
「落ち着け観音。優紀とハーモニーちゃんがどうした?」
『誘拐されてしまいました!』
(第四話 終)