第四話-8
気にするよ!
身の危険を感じるよ!
なんだよまさか俺の部屋に隠しカメラでもあるんじゃないよな。二階だし外から覗かれてるってことはないだろうけど。
「不肖この私が、ダーリンのために朝ご飯を作ってあげましょう」
「おぉ」
これは素直にありがたい。
傍芽の料理の腕は、母さんが認めていた。というか落ち込んでいた。
「これが格の違いというのね……」なんて膝を曲げて大袈裟に落ち込んでいた。
まぁ三年も前の話だけど。
「この前は聞きそびれたけど」
トーストにブルーベリージャムを塗りながら、俺。
「仕事は何してんだ?」
「実はAV関係の仕事をしてるんだよね」
AV……?
オーディオ・ビジュアルのことだよな?
アダルトなビデオのほうじゃないよな?
「へ、へぇ」
仕事の話終わり。
さっさと話題を移そう。
「実は昨日、女の子を拾ってさ」
「『捨て犬拾っちゃった』みたいなノリで言われても困るよダーリン」
「あ、ああ。それもそうだな」
「女の子って、どうせ十歳くらいの日系外国人でしょ?よくある話だよね」
「…………」
よくあってたまるかー!
絶体こいつ見てたよ!むしろ会話も聞いてたよ!
盗撮とか盗聴されてるよこれ!マジで怖いからやめてくれ!
「ハーブティちゃん、だっけ?」
「違う」
「ハーモニカちゃん?」
「似てるけど違う」
「モニカ姫?」
「なんでだよ!」
漫才を終えてトーストにかじりつく。
「ハーモニーちゃんって長いよね。魔法少女って呼んでもいい?」
どうしてそうなった。
しかもそっちのほうが長いだろうが。
「今頃はメリーゴーランドにでも乗って、きゃっきゃと無邪気に楽しんでるんだろうね」
どこまで知ってるんだよ。
俺をストーキングするだけならともかく、遊園地に行ったことまで知ってるとか怖すぎ。
「よし。魁の好きなハンバーグにしよう」
冷蔵庫の中身を見ていた傍芽が言い、パイナップルを取り出してこちらに見せてくる。
「おい。それを使う気じゃないよな」
「別におかしくないでしょ?」
たしかにハンバーグレストランのメニューにはあるけども。
「パインは何にでもあうんだよ?」
「いや、何にでもはあわないだろ」