第三話-6
「え?意外です。愛と勇気が友達なのかと思ってました」
「どこのアンパンだよそれ」
いや、待てよ。
「たしかに勇気(優紀)は友達だ」
「友達面とか勘弁してください」
「お願いですから真顔でそう言うこと言わないで!ダメージ半端ないんだから!」
恋人も拒否され。
友達も拒否され。
むしろ俺が死にたいね。
改めて俺たちの関係ってなんなんだろうな。
「次の新キャラは愛ちゃんですかね?」
「物語を先読みするのはやめろ」
本当に出てきたらどうするんだよ。
これ以上ヒロインを増やさないでくれ!
「あ。魁さん魁さん。ありましたよ」
突然なにかを閃いた様子の優紀。
「なにが?」
「魁さんが私を惚れされる方法ですよ」
「ほう」
自ら提示しようというのか。
ありがたやありがたや。
「えっと、BLって知ってます?」
BL。薔薇。ボーイズラブ。
「…………」
嫌な予感。
俺のそういう予感って結構当たるんだよな。
「ボーイズラブの略なんですけどね。男性同士の恋愛というやつで。あ、私はあまりディープなやつは読まないんですけど。もしも魁さんが男性を好きになってくれたら、私は魁さんに惚れます」
なんで優紀に好きになってもらうために、男に恋しなきゃならんのだ。
本末転倒だろ。
「うん?」
そんな他愛もない会話をしている時だった。
大きな段ボール箱が捨てられていた。
違法投棄、というわけではない。普通にゴミステーションにある。
「どうかしました?」
「いや、これ……」
47型の今風なテレビが入っていたらしい、それくらいの大きさの段ボール箱。
そこに、紙が貼られていた。
拾って
「捨て犬ですかね?」
「さあ、な」
中を覗き込む。
嫌な予感はしていた。
捨て犬、あるいは捨て猫なら、もっと小さい段ボールでも十分なはずだから。
「え、ひ、人!?」
人が。
十歳くらいの女の子が。
捨てられていた。
(第三話 終)