第三話-3
「結城さん。率直に魚(うお)が貝いたしますと、おうかがいいたしますと」
今噛まなかったか?
いや、きっと気のせいだろう。
「あなた……魁さまとはどういったご関係ですの?」
「どういったって……」
優紀は言葉に詰まる。
それもそうだ。
俺たちは恋人でも友達でもないのだから。
「戦友、ですかね」
彼女は迷った挙句にそう返した。
なんで迷った挙句の答えが戦友なんだよ。一体なにと戦ってるんだよ。
「なんと!愛の戦士ですね!マヨネー13ですね!」
それを言うならマヨラ13だろ。
なんだよマヨネーって。どこのボスキャラだよ。
それ以前になんで愛の戦士。
「マヨネーを知っているとは……!ブラッドさん、いえ観音。あなたとは仲良くなれそうですね」
「! なるほど。あなたもこっち側の人間でしたか、ミセス・優紀」
よくわからないが、今ここに女の友情が芽生えた。
ミセスじゃなくてミスだけどな。
***
学校。
昨日の優紀に引き続き、観音までクラスに転校してくるんじゃないかと思ったか!
観音はどうやら中学三年生らしく、あれでも中学生らしく、そんなことにはならなかった。
中学生かぁ……懐かしいな。
「私に、観音、傍芽さん、にゃんさん。すごい。あなたの周りには可愛い女の子ばかりいますね」
杏子を『可愛い女の子』のカテゴリーに含めるな。
まぁ他は否定はしないが、さりげなく自画自賛しやがりましたよ。
「本命はやっぱり傍芽さん?」
「何がやっぱりなんだよ。言ったろ。俺は優紀一筋だって」
「全然キュンときません。バッドエンドです」
よくわからないが酷い。
どうにかしてハッピーエンドにしたいな。
「なぁ優紀」
「なんですか?」
優紀が本気で『俺とは恋人じゃない』と思っていると知った時から、ずっと考えていたことがある。
恋人でもなく、友達ですらない。
だというのに同棲まがいのことはするわ、同じ布団で寝るわ、行動が理解できない。
本人が言っていたように『絆や魂が通じあってる関係』というのも、中々に曖昧なものだし。
「例えば、俺が優紀とキスしたいって言ったら「断ります」
言い終わるよりも先に断られた。
せめて言い終わってから断ってほしかった。
精神的ダメージが大きすぎる。