第三話-2
「飛沫観音は日本名で、フルネームは飛沫・ブラッド・観音と申します」
マジで血飛沫だった。
怖すぎる。
「スペルは違いますよ?」
「そりゃそうだろうね」
と。
一段落ついたところで。
「大変です魁さん!文体だと私とブラッドさんの語り口調がやや被って聞こえます!」
知らねーよ。
「ちょっとお茶目なお嬢様!飛沫観音!ここに参上!」
「…………」
「ちょっとお茶目なお嬢様!飛沫観音!ここに参上!」
「いや、二度も言わなくていいから」
なんだこいつ。キャラがブレまくってて掴めない。
「よかったな優紀。被ってないみたいだぞ」
「そのようです。一瞬キャラチェンも考えちゃいました」
考えるな。
あとイメチェンみたいに言うな。
「で、とてつもなく嫌な予感がするんだけど。母さん。まさかまさか、この観音様を住まわせるなんて言わないよな」
「それが言っちゃうのよね」
言っちゃうのか。
ふむ。まぁ俺の家とはいえお金を払って買ったのは両親だし、部屋もふたつほど余っているわけだし、何より俺も無茶言って杏子やら動物たちやらを飼ってもらっているし、文句は言えない。
ちなみに20匹を超える我が家の動物たちは、捨てられていたというのは話したと思うのだが、餌代やらなんやらがかかるのにこうして飼えるのは、条件として俺が『一生親に奉公する』と言ったからであったりする。
「部屋はもちろん別だよな」
「当たり前です」
答えたのは優紀だった。
「若い男女が同じ部屋で寝泊まりするなんて、あってはいけません」
お前が言うな。
しかしそれなら安心だ。
優紀だけならまだしも、いや、優紀だけでもドキドキして眠れないのに、これ以上俺の部屋に女が増えてたまるか。
二股上等の最低野郎じゃねーんだよ、俺は。
「遊戯さん。でしたっけ」
「違います」
「失礼。武藤さん、でしたね」
「違います。結城です。結託の城と書いて結城です」
「わたくしは飛沫(しぶき)に観音(かんのん)と書(か)いて観音(みおん)です」
「知ってますし。そんなにルピいらないですから」
なんだか険悪な雰囲気。
学校もあるし、さっさと朝食を済ませてしまおう。