第二話-2
「幸い部屋は空いてるんだ。そこを使えばいい」
「その空いている部屋は、近いうちに他の人が使うことになるので遠慮します」
「他の人!?これ以上まだ誰か増えるんですか!?」
「にゃんさんが居候しているのは、あなたが関係しているんでしょう?」
「う、ぐ……」
詳しく説明したことはなかったが、彼女の言うとおりである。
まぁあいつについては追々語っていくとして。
「同居はいいが同じ部屋はダメだ」
「そう。なら、屋上から飛び降りるしかないかな」
切り札を発動された。
なんて卑劣な恋人なんだ。
***
「改めてお世話になります」
ぺこり。
俺の両親に頭を下げる彼女。
「ふつつかな息子ですが、どうかよろしくね」
「ふ。お前もついに、結婚する気になってくれたか」
「いやいや。いくらなんでも気が早すぎだろ」
結婚って。
そりゃあ彼女に『妻と言っても過言ではない』とは言ったけどさ。
あれは我ながら過言だったと思う。
過言というより失言か。
「確認しておきたいのですが」
と彼女。
「彼に許嫁(いいなずけ)なんていませんよね?」
いるわけないだろ。
漫画じゃあるまいし。
お金持ちならありえそうだけど、一般家庭に許嫁がいる奴なんていない。
「いないとも言い切れないわね」
「なんですと!?」
俺の考えをものの一瞬でぶった切りやがった。
まさか現実の一般家庭に、というか俺に許嫁がいたなんて。
「初耳だけど」
「17歳になったら話す手筈になっていたのよ」
17歳って。
誕生日は明日だ。
うわ、なんだか次のページあたりで早くも新キャラが出てきそうな予感。
「でも優紀ちゃん。親としては、当人同士の気持ちを優先させるつもりよ」
「ありがとうございます。お母さん」
お前がお母さん言うな。
「あんたって意外にモテるのねぇ」
と母さん。
いや、今の今までモテたためしは一度だってないけれど。
「杏子さんも言ってたわよ。『魁くんが年上なら結婚してたかも』って」
「やめてくれ。気持ち悪い」
杏子と結婚なんてしてたまるか。
ちなみに杏子さんというのは、彼女で言うところのにゃんさんのことである。
星渡杏子(ほしわたり・あんず)。
それが現在、いずこかへ遠出している同居人のフルネーム。
星渡とは。自由人のあいつらしい苗字だよな。