第一話-4
否定する彼女にサンドイッチを食べさせてもらっていたりする。
これが恋人でなくてなんだと言うのだ。
「恋人がイヤなら、親友でもいいけど」
「親友もイヤです!友達もイヤです!」
「え、じゃああとは、気が進まないけどセフレ?」
「だーかーらー……!」
我が侭な彼女だなぁ。
ヤンチャを通り越して我が侭だよな。
ワガデレと名付けよう。
「優紀は俺とどうなりたいわけ?」
「ど、どうって……」
「恋人はイヤ。夫婦もイヤ。親友どころか友達もイヤ。セフレもイヤ。どんな関係を望んでるんだよ」
「そ、それは……言葉では言い表せないような関係といいますか……」
言葉で言い表せない?
ふうむ。
「性奴隷?」
「そういうことじゃなくてですね!?」
どうやら違ったようだ。
言葉で表すのも躊躇われる関係だと思ったのだが。
「き、絆、とか、魂が通じあってる、みたいな関係で……」
魂が通じあってる。
ぷぷ!なんだよそれ!
「今笑った!?笑いましたよね!?」
「ぷ、くく、そんなわけ、ぷふ、ないだろ」
「思いっきり笑ってるじゃないですか!?」
まぁ冗談はともかくとして。
冗談かどうかはともかくとして。
言葉では語れない、心のラインで繋がってる関係、とでも言いたかったのだろう。
***
帰宅途中。
「そういえば、家はどうしたんだ?引っ越したのか?」
「えっと……まぁ、はい。引越し、ました……」
言葉を濁される。
なにやらわけあり?
「そっか。いつでもいいから、場所教えてくれよな」
前の家はそれほど遠くない場所にあったが、もしかしたら俺の家の近所に引越してきたのかもしれないな。
ヤンチャだから。
「家、着きました」
「え?どこ?」
「ここです」
表札は『小田原』となっている一軒家を見上げる。
「そうか、ここが……」
それにしても見覚えのある家だな。
「『側にいろ』って言ったのは、あなたのほうですからね?」
(第一話 終)