第一話-3
「ちょっ!?どこ触ってるんですか!?」
当然の抗議を無視し、彼女のポケットの中から携帯電話を取り出した。
「あっ」
パカッと開く。
男性二人。
ラブラブな感じ。
「…………」
こいつ腐女子ってやつか!
「俺の番号とアドレス登録しておくから」
「は、はい……」
何故だか素直に頷く彼女。
「あんた、名前は?」
「結城……です」
「ふうん。下の名前は?」
「……優紀」
「いや、だから下の……」
言いかけ、一回目と二回目でニュアンスが違ったことに気付く。
一回目の『ゆうき』は優木まおみの発音で。
二回目の『ゆうき』は天海祐希の発音だった。
「上も下も『ゆうき』なの?」
「はい……結託の城に優しい紀元前と書いて結城優紀(ゆうき・ゆうき)です」
説明下手過ぎ!
伝わったけどさ!伝わったけどね!?
「俺は小田原魁(おだわら・かい)。小田原城にさきがけで小田原魁」
「小田原かい!」
「え?」
「…………」
なんだったんだ今の。
駄洒落のつもりだったのかな。
「小田原魁さん。私はヤンデレなので、あなたが驚くことをしちゃいますよ?」
やんでれ?
ツンデレみたいなものかな。
ヤンチャなデレ。
「そっか」
俺の携帯電話に彼女の番号とアドレスを登録し終えたところで、ひょいと投げて返す。
「俺もメールするけどさ。優紀もちょくちょく電話なりメールしてくれよな」
「はい。命を預けろ、なんて言ったのを後悔するくらいにメールします」
あはは、ヤンチャだなぁ。
「側にいろ、と言いましたよね」
「ああ」
「それじゃあ、近いうちにあなたの学校へ転校するかもしれません」
あはは、ホントにヤンチャだなぁ。
***
回想終わり。
まぁそんなことがあり、今日に至るというわけだ。
ちなみにあれから半年が経過している。
その間ももちろん電話やメールをしたり、たまに会ったりもしていたけれど、うちの制服を着た彼女は新鮮だな。
古風なセーラー服である。
「そ、れ、で!恋人ってどういうつもりですか!?」
昼休み。
俺たちは二人仲良く中庭でランチと洒落込んでいた。
「照れ隠しか」
「違います!」