サヨナラの果て-6
チクリと痛む胸を押さえるように、そっと胸元に手を置くと、陽介がくれた四つ葉のクローバーのネックレスに指が触れた。
まるで、「俺がいるから平気だろ」とでも言いたげなようにその存在を主張しているチャームをグッと握り締める。
そう、優真先輩とは別れてからずっと口を利いてなかったじゃないか。
その状態に戻っただけだ。
ただ、優真先輩の優しさを、後悔を、真剣な想いを知ってしまったから、彼を手放した時にちょっぴり名残惜しくなっただけだ。
あたしは、チラリと優真先輩の背中を見やってからゆっくり目を閉じた。
指先だけで感じる、クローバーの形は陽介の想いの形。
be mine. 私のものになって。
ネックレスに触れていると無性に陽介が恋しくなってくる。
このゼミが終わったら、早く帰ろう。
あたしは、テーブルに置いたバッグの中からスマホを取り出すと、アドレス帳から大好きなアイツの名前を表示させ、発信させてからそれを耳にあてた。
しばらく鳴り響くコール音。
昨日の激しいセックスがたたって動けないから、今日は大学を休むって言ってたし、いまだにあたしの部屋で夢の中かもしれない。
コール音が8回ほど鳴ってから、寝起きの声が
「……はい」
と、聞こえてきた。
うわ、めちゃくちゃダルそう。
何となく電話越しの陽介の姿が容易に想像できて、笑いが込み上げてくる。
きっと、あれからずっと寝てただろうから、お腹空いてるだろうな。
よし、今日はご飯作ってあげよっと。
そんな疲れきった、元気のない声にクスクス笑いながら、あたしはゆっくり口を開いた。
「――もしもし、陽介? 今日の夜は何食べたい?」
完