ヤキモチヨウスケ-6
「あ、飲んじゃったのか!?」
少し焦った陽介は、まるで酔っ払いを介抱するみたいに、あたしの背中を、優しくさすってきた。
それを「大丈夫」と涙目ながらも手で制してはみたものの、これは正直キツかった。
AVなんかではよく顔にかけられたり、それを指ですくって美味しそうに舐めたりしているのを見たことがあるけど、これは愛があってもなかなかできるもんじゃない。
「陽介、かなりマズい、これ」
「だから吐き出せっつったのに」
「……でも、陽介のだから飲めたと思う。これ、他の男のだったら死んでも無理だね」
なんておどけてから、あたしはイガイガする喉をスッキリさせるため、キッチンに向かって洗いかごから小さなグラスを取り出した。
蛇口をひねると勢いよく水が飛び出してきて、あたしはグラスに汲んだそれで、ゴロゴロうがいをした。
ぬるくてカルキ臭いけど、喉がスッキリしていく。
でも、よく考えたらうがいなんて失礼かな。
まるで汚いものをすすぐみたいな真似してんだから、もしかして傷つけちゃったかも。
「あ、陽介……、うがいしたのはね……」
喉の水分が異常に奪われた感じがしたからなの、と言いかけてベッドの方を振り向くとそこには彼の姿がなかった。
代わりに後ろから抱き締められる。
「よ、陽介……」
「ごめんな、メグ。嫌な思いしただろ?」
「いや、だ、大丈夫だよ」
「いや、俺が女だったら絶対できねえもん。だから俺、女とヤってて口の中に出すことはあっても、飲ますなんて真似はさせたことはなかったんだ」
「そうなの……?」
「でも、お前が初めて俺の飲み込んでくれたのを見たら、……なんつーか、愛を感じた」
「こんなことで愛を感じないでよ」
なんてクスクス笑っていると、突然視界がステンレスのキッチンシンクから天井のクロスに変わった。
さらにはフワリと脚が床から離れたことによる浮遊感。
そして、あたしを見下ろす陽介の顔。
そう、あたしは。
「よ、陽介……?」
絡まる視線はどことなく意地悪な笑みを浮かべている。
「だから、気持ちよくしてくれたお礼をしてやるよ」
いわゆる「お姫さま抱っこ」なるもので、身体をしっかり捕らえられていた。