ヤキモチヨウスケ-3
目を真ん丸にして陽介の顔を見つめたまま、あたしはしばらく固まっていた。
予想もしなかった名前が出てきて、あたしの頭の中は軽いパニックになっているようだ。
だって、羽衣さんって……。
「広瀬くんの彼女でしょ!? あんた、親友の彼女に何してるわけ!!」
咄嗟に陽介の肩に爪をたてて、あたしはその身体を揺すった。
そう、羽衣さんと広瀬くんは陽介の高校時代からの友達。
羽衣さんと広瀬くんはずっとお互い想い合っていたけれど、友達というポジションから進めずにいたらしい。
それを陽介がキューピッド役になって、うまく取り持ったって話は陽介から聞いてた、けれど……。
「いや、あの二人をくっつけるために、俺は仕方なく……」
「仕方なくって、一体どうすればそんな展開になるのよ!」
「だから、広瀬に羽衣の感じてるとこ見せたら一気に進展するかなあって……」
「だからって、あんたがそういうことする必要なんてないでしょうが! あー、もう! 陽介って最低!!」
みるみるうちに目をつり上げていくあたしに、すっかり怯えきった陽介。
すっかり怒り心頭のあたしは、プイッと陽介に背中を向けた。
「……メ、メグ」
「何よ」
「怒って……る?」
「当たり前でしょ」
背中をツンツン突いてきた陽介の手を思いっきりはたき落としてやる。
「俺のこと、嫌いになっちゃった?」
「大嫌い」
「仲直りのエッチは……?」
「あるわけないでしょ!」
こんな時でもそういうことを言ってくる神経がわからない。
わからない……けど。
チラリと横目で彼の様子を伺えば、身体を起こした陽介はベッドから足を下ろして、背中を丸めている。
「チェ、お前に隠し事したくないから正直に話したのに。こんなことなら言わなきゃよかった」
哀愁漂う丸まった背中を見てると、なんだか笑いが込み上げてくると共に、たまらなく愛おしくなってくる。
あたしはクスリと笑ってから、ベッドを降りると陽介の前に膝をついた。
そして彼の顔を見上げると、まるで叱られた犬みたいにシュンとしょげている瞳と交差した。