光の風-6
「…ありゃ反則だろ。…あれはないよなぁ。」
あんなにも心地良い空間を作るなんて反則だ。おかげでこっちが大変な目にあう、彼女を自分から離したほうがいいかー…でも手放せるのか。唯一安らげる場所。カルサは悶々する気持ちを抱えて城を一周してから部屋に戻ることに決めた。そうすれば頭も冷えるだろうし、彼女ももういないだろう。大分頭も冷え、私室のドアに手をかけ中に入った。寝室の方のドアを開けるとリュナがソファーに座っていた。
「うわぁっ!」
「きゃあっ!」
カルサはリュナに驚き、リュナはカルサの声に驚いて悲鳴をあげる。辺りは静まりかえり、いやな沈黙が訪れた。
「カ、カルサ…おかえりなさい。」
そう言われたらこう言うしかない。
「あ、ただいま…。」
沈黙が二人を包み込む。なんでまだいるんだよ…。リュナは少し赤くなって俯き、カルサはバツが悪そうに右手で頭をかいた。
「あ、紅茶飲む?入れ直すけど…。」
「あ、ああ…。」
リュナはいそいそとお茶を入れ直す、その様子を見ながらカルサは席についた。腰掛けたカルサを見てリュナは優しく微笑んだ。つられたカルサも笑う。気にしていない、か?リュナの振る舞いに緊張が少しほぐれた。
「料理長が作ったお菓子、つまみぐいしちゃったけど、すごく美味しいの。」
そう言ってカルサの前にお菓子の皿を置いた。カルサは一口かじる。
「本当だな、うまい。」
誇らしげにほほ笑みながら、ティーカップをさしだした。カルサの向かい側に座ろうとするリュナをカルサはソファーを叩いて横に座らせた。座ったのを確認して頭はリュナの肩にもたれた。リュナの右肩にカルサの重みを感じる。リュナは嫌がる様子はなく受け入れていた。その気持ちが嬉しかった。
「…カルサ、子供みたい。」
笑いながらリュナが呟く。その声は優しい。
「…うるせぇ。」
照れながら憎まれ口をたたく。それがまた可愛らしくリュナには思えた。
「カルサ、大好きよ。」
眠りかかっていた軽さの目は一気に覚めた。リュナの肩にもたれたまま次の言葉を待つ。
「なんか、子供ができたみたいだわ。」
笑いながら言うリュナに対しカルサは苦笑いで脱力していた。子供かよ。左手でリュナはカルサ頭をよしよしと撫でた。あまりの子供扱いに苛立ち、カルサは頭をおこし頭にあった左手を掴んだ。
「あんまオレをなめてると、次は襲うぞ。」
顔を近づけ威嚇する。本気ではなかった言葉だが、この近すぎる距離も手助けしリュナの顔は真っ赤になった。
「なっ…お前そこだけ反応するなよ。」
つられてカルサも赤くなり距離をとる。手を離そうとした時リュナの言葉が動きを止めた。
「…いいよ。」
カルサを真っすぐ見つめる。空いている右手をカルサの頬にあてた。触れられたぬくもりのせいか、カルサは動けない。