月経タイム 後編-2
明くる日、マユミは学校の部活動が終わった後、和代に呼び止められた。
力なく振り向いたマユミは、やっとの思いで口を開いた。「・・・何?どうしたの?」
「最近元気ないですよ、先輩。何かあったんですか?」
「別に何も・・・。」マユミはうつむいた。
「この前はごめんなさい。」和代はぺこりと頭を下げた。
「え?」
「無神経にケンジさんのアドレス教えてくれ、なんて言っちゃって。」
マユミの脳裏に、公園で語らうケンジと和代の姿が甦った。
「・・・・・・。」
「速攻で振られちゃいました。」和代は照れたように言って頭を掻いた。
「えっ?」マユミは思わず顔を上げた。
「あたし、ケンジさんを公園で待ち伏せして、手紙渡したんです。先輩が言ってくれたように、直接会って。でもケンジさんのお返事は『ごめんね』でした。」和代はつややかなピンク色の舌をぺろりと出した。
「そ、そうなの?」
「はい。その場で。即答でしたね。」
「ケ、ケン兄、その場であ、あなたの手紙を読んだの?」
「はい。あたしとっても恥ずかしかったけど、でも、すぐに結果が出て、今は正直ほっとしてます。」
「そうだったんだ・・・・。」マユミは独り言のように呟いた。
「『俺にはもう付き合ってる人がいる。その子のことしか今は考えられない』って。」
「ケン兄が、そんなことを・・・。」マユミの涙腺がゆるみ始めた。
「それにケンジさん、あたしの手紙、突き返さずに受け取ってくれたんですよ。普通そんなことしないですよね?」
「そ、そうだね。」
「『君の気持ちには応えられないけど、受け取ることはできるよ』ですって!もう感激です。優しすぎ!あたしそれだけで彼を好きになって良かった、って思えましたもん。それに、」和代は頬を赤らめて続けた。「『俺は一日中、大好きな彼女のことを考えているんだ。』ですって。めちゃめちゃ素敵でかっこいいですよね。ケンジさんにそこまで言わせる彼女って、どんな人なんだろう・・・。マユミ先輩は知ってるんですか?そのケンジさんの彼女。」
マユミはにっこり笑った。「うん。知ってるよ。」
そしてマユミの目から涙が一粒、ぽろりとこぼれた。
「あれ、何で泣いてるんです?先輩。」
「え?あ、あの、和代ちゃんって、いい人だな、って感動したんだよ。」
「えー、何であたしがいい人なんです?」
「いい人だよー。」マユミは泣き笑いしながら和代の頭を乱暴に撫でた。