君をマジで殺したい-1
見慣れたアパートに着いた頃にはすでに夜の9時をまわっていた。
今日は芽衣子に、昼の仕事もキャバクラのアルバイトも無理矢理休ませたから、俺達の部屋にもすでに明かりが点いていた。
芽衣子が警察に行ってる可能性も考えていたから、彼女がアパートに帰っていたことに安心していた。
と、同時に、崖から無理矢理飛び込まされても、ちゃんとここに戻って来ている芽衣子の生命力に恐れ入った。
さらには、こんな時間にここにいるってことは、病院にも警察にも行かなかったことが推測できたし、それをしなかった彼女の図太さに思わず舌を巻いてしまったほどだ。
しかし、無理心中させられた被害者とは言え、生き残ってしまったからにはあらぬ疑いをかけられることになるだろうから、彼女が警察に行かなかったのは好都合なのは確かだ。
俺の死体はまだ打ち上がってないと、園田が言っていた。
出来ればこのまま俺は行方不明として処理された方が、芽衣子に迷惑がかからない気がする。
まあ、芽衣子はバカだから警察に行くという選択肢が最初っからないような気がするが。
そんなことを考えながら俺は、芽衣子が向こうにいるであろう玄関のドアの前に立った。
ドアノブを握ったところで、すかさず園田が、
「物に触れたらダメですって。
手島さん、いちいちドアなんて開けなくても体をすり抜けていけるんですから」
と、バカにしたような顔をこちらに向けてきた。
んなこと言ったって、死んでからまだ数時間しか経ってねえのに勝手がわかるわけねえだろう。
俺は園田を一睨みして、舌打ちをしてからスルンとドアを通り抜けた。