君をマジで殺したい-9
「……どうだった?」
恐る恐る俺が訊ねると、
「いやあ、有野さんあんなあどけない可愛い顔して、すごい大胆でした。
自ら上になり下になり、髪を振り乱す姿は、一言で言うなら“ケモノ”のようでした」
と、どこか満足気な顔で曇った夜空を仰いでいた。
一仕事終えたみたいな達成感を漂わす園田に苛立った俺は、すかさず奴の後頭部を勢いよく叩いた。
すると、園田のかけていた眼鏡がスコンと前に飛んで落ち、彼は横山やすしの往年のギャグのごとく、“メガネ、メガネ”と辺りを探っていた。
「ちげえよ、バカやろう! んなこと訊いてんじゃねえ!
俺のこと何か言ってたかどうかが知りてえんだよ!
俺の名前を呼んでたりしてただろ!?」
「あ、そうだったんですか……。
私はてっきり久留米さんとの絡みの様子を知りたかったのかとばかり思ってました」
ようやく眼鏡を探し当てた園田は、素早くそれを装着させ、俺の顔を見てから、言い辛そうに首を横に振った。
「いいえ、茂の“し”の字も言ってませんでした。
あ、でも“死んじゃう〜”なんて言ってたから、“し”の字は言ってたか……」
俺は園田が言い終わる前に再び奴の頭をもう一度叩いた。
「だから、そんなこと訊いてねえっつってんだろうがよ!」
もはや怒り心頭の俺は、自販機に向けて思いっきり蹴りを入れた。
すると、蛾やら羽蟻が蜘蛛の子を散らしたように一斉に飛んでいった。