君をマジで殺したい-3
呆然と立ち尽くす俺に気付かない芽衣子と久留米は(当然だが)、完全に二人だけの世界に入っていた。
小さなテーブルの前で、ベッドを背もたれにして並んでいた二人は、まるで恋人のように寄り添い合っていた。
久留米は力強く芽衣子を抱き寄せ、彼女の少し癖のある長い髪に時々頬ずりしているし。
芽衣子も芽衣子でそれを振り払うわけでもなく、久留米のガッシリした体に自分の細い体をしっかり預けているし。
「あーあ、来なきゃよかったですね。
恋人が死んだってのに、病院にも警察にも行かずすぐ浮気ですか。
すごいですね、有野さんは」
遅れて部屋に入って来た園田は、この状況をチラッと見てから、哀れみの全くこもっていない声でそう言った。
「まだ浮気って決まったわけじゃねえだろ!」
そうだ。
きっと芽衣子は俺が死んでパニックになって、誰でもいいから助けを求めている時に、たまたまここにやってきた久留米にすがってしまっただけなんだ。
一人でなんとか答えを出しながら、俺は芽衣子達の会話を黙って聞いていた。
「もう、泣くなよ……」
「だって、茂が、茂が、逝っちゃったあ……!」
やっぱり俺のことを想って泣いてるじゃねえか。
しかし久留米は、泣きじゃくる芽衣子の耳元で、
「芽衣子を置いて蒸発するような卑怯な奴、忘れちまえよ」
なんて、非情なことを囁いていた。