プロローグ-2
世間一般では彼等を『有機質アンドロイド』と言う名義で呼ばれていた。彼等の基本的なシステム要素は、脳内にCPUナノシステムコンピューター高性能半導体チップを搭載(研究者達の間では通称Lコアと呼んでいる)、システム容量最大10ペタバイト(1ペタは10の15乗、つまり千兆の位)を用い、藍色ホログラム発光レーザーを搭載、瞬時に100層までのデータ信号を読み取る事が可能。約1秒間に最大で1垓(垓は京の4乗である。つまり10の20乗)までの計算処理速度を行う事が可能だった。このLコアシステムを有機質細胞に組み込み、人間と同じ形の脳内である大脳の奥にある中枢部神経の奥に取り組ませる事により、設定から最大100年間、人工知能(A.I)による自己学習能力と記憶機能を取り組める事が可能であった。
人間の構造と、さほど違わない形で作られたアンドロイド達...、ある評論家は口を尖らせて言った。「何故、複製人間(クローン)が駄目で、疑似人間(アンドロイド)は、良いのだ?」
有機質細胞によって生み出されたアンドロイドは、人造人間と言うよりも、『疑似人間』と呼ぶにふさわしかった。それゆえ評論家達の間では、しばしば俗称として『疑似人間』と言われる事があった。そんな評論家達に対して、政府関係者達は口を揃えて答えた。
「利用目的を子供のいない家庭に提供する事を前提に開発を進めている為であり。もし仮にアンドロイドと人間との間に、性交渉が行われても彼等との間に子供は生めない...」「クローンは、元となる遺伝子情報(DNA)から人間を複製させる構造で行う。これは一部にプライバシーに関わる事にもなる。それに対して、アンドロイドは、ほぼ無の状態から作られる。何よりも、クローンは短命だが...アンドロイドは長寿である。人造人間である為に、精子や卵子といった、生殖機能も無い」
さらに言うなれば...クローンは、複製型である。クローンにより生まれる人間は、オリジナルと同じ形の人間である率が高い。一方アンドロイドは、単体で願客の要望により、顔や身体、性別、年齢までもが、好みによって変えられる。同じ型の物は無いに等しかった。そう言った内容から、アンドロイドは口煩い評論家達の目を潜り抜ける事に成功した。開発元の販売側からすれば、アンドロイドの提供元の一番の願客は、若い独身者達であるが、少子化傾向が深刻化する時代に、結婚出来ない若者達に、アンドロイドを送り込ませる事は「一生独身でいて下さい」と、言うのと変わらない事である為、独身者には、提供させない事を政府関係者達に言われていた。
彼等の研究には、神が掛かっている。そう...世間の誰もが信じて疑わなかった。
...ある事件が起きる、その日までは...。