はじめました-2
ふと、彼女の手が伸びてくる。
その指先は僕の口元を拭って、そのまま彼女の口に運ばれた。
「ここの冷やし中華、美味しいね」
舐めたばかりの彼女の指を見ると、ネイルが濡れて光っていた。
ほんの数日前にも、ベッドの上でオナニーを披露してくれた彼女のネイルが、こんなふうに妖しく濡れていた。
そんな僕の回想を置き去りにして、彼女はどんどん食べる。
食事をすると、人の体温は微妙に上がるらしいと習ったことがある。
そのせいかどうかは定かではないけど、彼女の顔が上気しているように見える。
白い胡麻ダレが口のはじに浮いて、ピンク色の舌で、ちろっ、とそれを舐め取る。
コップの麦茶に口をつけると、彼女の喉が波打った。
ふたたびデジャビュをおぼえる僕。
フェラチオなどという不潔な行為のあと、彼女は僕の精液をぜんぶ飲んでいたのだった。
あのときのあれは、どんな味がしたのだろうか。
ただ、彼女のあそこから出ていた液体は、しょっぱくなったり、酸っぱくなったり、興奮の度合いで変化するようだ。
「美味しかったです。先生の、あれ……」
僕は場違いなカミングアウトをしていた。
「ばか」
嗜められながらも、僕の下半身は生き生きしていた。
彼女はただの家庭教師で、僕は普通の中学生だ。
無事に志望校に合格することさえできれば、またそれぞれの道に進んで、人生の延長をなんとなく過ごしていくのだろうと思っていた。