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5日間の恋人
【悲恋 恋愛小説】

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5日間の恋人-5

 最初のスペースマウンテンに乗った後、この体になったおかげで、今までとは違うディズニーランドの楽しみ方を知ったあたしは冬哉とほとんどのアトラクションを制覇していった。
 「いいけど、またぁ?もう3回目じゃないか。」
 「だって待たなくていいし…。楽しいんだもんっ!」
 「楽しい?よかったよ。喜んでもらえて。」
 (あ…。)
 あたしを見て優しい顔で微笑む冬哉を見て、いつのまにか冬哉以上に自分がはしゃいでいることに気付いた。
 「ちょっと休憩しよ。ここ座りなよ。」
 あたしたちはベンチに腰をおろした。
 「伊吹、クールビューティとか氷の女神とかって呼ばれてたの知ってる?」
 「なにそれ!?」
 「伊吹の周りの人たちが君のことそう呼んでた。美人だけど、感情をあまり表に出さないって。」
 (…。)
 確かにそうだったかもしれない。いつからだろう。あたしはあんまり感情を表に出さなくなっていった。こんな風にはしゃぐこともなかった。
 (春斗とつきあうようになってから?怒りっぽい春斗とつきあうようになって、自分の感情をありのままに出すと喧嘩が耐えなかった。喧嘩することに疲れたあたしは、感情を表に出さず、気持ちを押し殺すことで春斗とのトラブルを避けてきた。
 (ほんとはこんな風にはしゃいだりしたかったのかしら?)
 「疲れた?もうこんな時間だもんね。そろそろ帰ろうか。」
 考えこんで黙っていたあたしを見て冬哉はそう言った。
 「あ…。」
 (まだ…、まだもう少し遊びたい…。)
 そう思っていたのに、ベンチから立ち上がり、
 「さ、帰ろう。伊吹と一緒にいる時間はまだあるんだから、あんまり無理はさせられないよ。」
冬哉は、相変わらずの優しい笑顔であたしに手を差し伸べた。
 (まだもう少し、遊びたかったけど…。)
 あたしは黙って冬哉の手を取った。

 「今日はありがとう。すごく楽しかったよ。また明日デートしよう。どこか行きたい所がないか考えておいて。じゃ、また明日。」
 あたしを家まで送り届け、そう言うと冬哉は星空へと消えていった。
 (今日はひさしぶりに、ほんとに楽しかったなぁ。冬哉ってば見た目とギャップありすぎ!かっこいいのに、子供みたいにあんなにはしゃいじゃって。…もうちょっと、冬哉といたかったのに。)
 (?あれ?なんで、冬哉といたかったなんて思うの?なんでこんなに冬哉のことばっかり考えてるの?へんなの、あたし。)
 この時はまだ気付いてなかった。自分の気持ちに。 (なんで冬哉の顔ばっかり浮かんでくるんだ?)
 そんなことを考えながらあたしは眠りについた。
2日目。冬哉のことを考えながら過ぎていった。

3日目。その日もよく晴れた日だった。
 (今日はどこに行くのかな?)
 あたしは朝早く目が覚めた。
 (お弁当でも作ろうかな?冬哉、食べてくれるかな?)
 恋人の春斗は恋人らしいことをするのをいやがった。だからお弁当作ったり、そういうことはしなかった。
 (あ、電話。)
 ちょうどお弁当を作り終わったころ、冬哉から電話がきた。
 「あ、伊吹、起きてた?今日はどこ行こうか。行きたいとこある?」
 「うん…。あのね、今日お弁当作ったの。海見たいな。海でお弁当食べない?」
 「お弁当!?伊吹が作ってくれたの?ほんとに?俺のために?」
 「や、そんなすごいお弁当じゃないってば。あんまり期待…」
 期待しないでって言おうとしたのに、途中で電話が切れた。そしてその30秒後、冬哉はあたしを迎えにきていた―。
 「すげ…、これ伊吹が作ったんだよね?うまそう!食べていい?」
 「そんなにすごくないよ…。これくらい…。」
 冬哉は、あたしの作ったお弁当をいちいち感激しながら食べてくれた。
 (…海は失敗だったかな?寒いかも…。冬だから当たり前なんだけど。)


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