投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ひとしずくの排卵
【その他 官能小説】

ひとしずくの排卵の最初へ ひとしずくの排卵 36 ひとしずくの排卵 38 ひとしずくの排卵の最後へ

十三-1

 それからの春子の記憶はもうひどく曖昧なものだった。
 すべてが終わった部屋に明るい太陽が差し込んで、微かに風の匂いが吹き込んでくる。
 閉まっていたはずの戸が開け放たれていたのだ。

 あらわれた少女は毛布にくるまれていて、付き添いの女性に肩を抱かれたながら畳に座る。

 さらに数人の大人が室内になだれ込み、「九門和彦だな」と荒い口調で言う。
 無言の父は大人たちに連れて行かれた。

 毛布の少女が美智代だとわかると、二人して抱き合いながら涙を枯らした。
 美智代はすでに、和彦によって犯されていた。手足には縛られた痕が生々しく残っている。

 美智代は自力で拘束を解き、それでも警察に直接電話をする勇気がなくて、父親である善次に助けを求めたのだった。

 一方、春子を追って家を出た紳一は、美智代と祭りに行くという春子の言葉から、桜園家を訪ねていた。
 そこに美智代からの電話があったのだ。

 自分と春子は九門和彦に監禁されている、という内容だった。

 紳一は春子の元へ急ぎたかった。けれども気がかりなことがもう一つあった。
 森咲つぐみのことである。

 紳一の足は自宅へ向かっていた。
 そしてそこに繁とつぐみの姿がないとわかると、その足で養鶏場を訪れた。

 辛い選択だった。ほんとうなら春子を先に救うべきだと思ったが、つぐみに関しても嫌な予感がしていたのだ。

 佐々木家は静まり返っていた。玄関には鍵がかかっていたので、紳一は裏口にまわった。
 鍵は開いていた。

 そうして上がり込んだ先で見た光景は、紳一の想像していたものだった。
 力なくブラウスの袖に手を通すつぐみは、紳一が来たことにも気づかない様子で、その動作を止めようとはしない。

 犯された痕跡が体のあちこちにまとわりついている。
 どこを見るでもない目が痛々しかった。

 彼女の傍らに佐々木繁がいた。蛙が仰向けになって気絶している、そんなふうに紳一には見えた。

 紳一は何も言わずにつぐみの元へ駆け寄り、彼女の背骨を撫でるように抱きしめた。

 ふと我に返ったつぐみは、ずっと我慢していた涙を溢れさせて、紳一の体に甘えた。
 自分の淫らな姿が恨めしく思えた。


ひとしずくの排卵の最初へ ひとしずくの排卵 36 ひとしずくの排卵 38 ひとしずくの排卵の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前