赤い唇<後編>-6
ゆっくりと身体を反転させ、俺の背中に抱きついてくる奈美子。
娘の加奈同様、たわわなふたつの胸の感触。
いや、さすがに本家のそれは存在感が半端なかった。
「なに考えてるのか当ててあげようか?うりゃうりゃっ!」
「ば、ばかっ!押し付けてんじゃねぇよっ」
じゃれるようにその胸を押し付けながら、細い手で俺の頬を撫でる奈美子。
懐かしい匂いに思いのほか胸が高鳴ってしまう。
「ねぇ?もう加奈のこと抱いちゃった?」
「な、なに言ってんだよっ!?」
「ふふ、相変わらず嘘がつけない男ね?ちゃんと顔に出てるわよ?」
「う、うるせぇっ!そんなこと母親が聞くなんて…… 反則だろ!」
なにもなけりゃこんなに動揺することもないだろうよ。
なにもなけりゃきっと昔を懐かしむように、
ただなんとなく抱いてそれで終わりだったろうに……
「じゃぁ…… 今でも私を抱ける?」
まるで俺の心を読むように、突然そんなことを言い出したかと思うと、
スルスルと俺の後ろで衣擦れの音が聞こえはじめた。
「お、おいっ!なに脱いでんだよっ」
「あら?一枚ずつ脱がすほうが好みだったかしら?」
「そ、そうじゃなくてっ」
「大丈夫よ?龍二の服はちゃんと私が脱がしてあげるわ……」
奈美子はなやましげにそう囁くと、
細い指でそっと俺のシャツに手をかけはじめた。
「ま、待てって…… 別にそういうつもりじゃ……」
「なに言ってるの?ここまで来ておいて……」
「いや、それはそのっ」
「ふふ、こんなおばさんじゃイヤかしら?」
「……それを言ったら俺だって充分おじさんだよっ」
「だったら………… ね?」
されるがままにシャツを脱がされてしまう俺。
暗くてよくは見えないけれど、奈美子はすでに服を脱ぎ捨ててしまっているようだ。
「ねぇ龍二?ひとつだけいいこと教えてあげるわ」
「な、なんだよっ これ以上まだ……」
「あの子………… 加奈はあなたの子供よ?」
その瞬間、俺は血の気が引く音が聞こえた。