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黒の他人
【ラブコメ 官能小説】

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赤い唇<後編>-3

「はぁ…… びっくりしちゃった!なんだったんだろうね?」

「ん?ああ、きっと世間知らずの娘が心配でしょうがなかったんだろ?」

「えぇっ!ひどいっ ちゃんとやってるもんっ」

大きく頬を膨らませながら俺の胸をぽかぽかと叩く加奈。
事なきを得て安心したのか、随分とリラックスしているように見える。

けれど俺はと言えば、表面上なにごとも無かったように平静を保ちつつも、
どこか、心中穏やかではいられない。

「……どうしたんですか?龍二さん」

「うん?別にどうもしないが?」

俺の動揺を察知したのか、不思議そうに顔を覗き込む加奈。

加奈に隠し事なんてするつもりはない。
たとえ責められる間柄じゃなくとも、加奈に嘘を突き通すなんてきっと俺には出来ないだろう。
事実、加奈と出会って以来、やましいことなどひとつもない。

けれど、どうしても言えないことがある。
いや、むしろついさっき、どうしても言えない事実が判明してしまったのだ。

「加奈?わりぃ、今日はちょっと用事を思い出した……」

「……そうなんですか?」

「ああ、この埋め合わせは今度絶対するから」

「ど、どうしたんですか突然?そんなこと今まで気にしたこと無いですよね?」

いつになく言葉数の多い俺に加奈がいぶかしむ。
確かにそうだ、帰る理由に後ろめたさを感じるなんて随分とらしくない。

「ひょっとして…… 母が来たことで気を悪くさせてしまいましたか?」

心配そうに俺を見る加奈。

「そんなんじゃねぇよ…… 小娘が余計な詮索してんじゃねぇ」

そう言って俺は加奈の額を軽く指で突っついた。

額をさすりながら、少しふて腐れた様子の加奈。
そんな加奈を見て俺はどこかいじらしく思ったのか、つい無意識にその身体を抱き締めていた。

「にゃっ!?ど、どうしたんですか急に?」

「いや、なんとなく……だよ……」

何か言いたげな様子の加奈。
けれど、俺はまるでそれを遮るようにそっと唇を重ねると、
手を振りそのまま振り向かず、まるで逃げるように加奈の部屋を後にした。


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