投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ひとしずくの排卵
【その他 官能小説】

ひとしずくの排卵の最初へ ひとしずくの排卵 11 ひとしずくの排卵 13 ひとしずくの排卵の最後へ

-3

 長い夜が明けた。先に起きたのは春子だ。
 紳一を起こさぬように、そっと風呂場に入って朝湯を浴びる。

夕べのこと、お父さんは忘れないでいてくれるかしら。
寝床で自分の娘を抱いたことを──。

 全身に水滴をしたたらせながら、春子はそんなことを思っていた。
 しゃがんで股間を洗い流してみると、ぬめったお湯が排水口に吸い込まれていった。
 体の中にまだ父がいるような気がして、幸福な痛みが胸を打っていた。



 紳一が起き出してくる頃には、春子はセーラー服に着替えて朝食の支度をしていた。

「お父さん、おはよう」

「おはよう。夕べは眠れたか?」

「知らないから」

 そう言ってむくれてみても、内心は幸せでいっぱいだった。
 あくびをしながら新聞を読んでいる紳一につられて、春子もあくびをした。二人とも熟睡できなかったのだ。

「おはようさん。紳一くんは居るかね?」

 まだ朝も早いというのに、大きな声が玄関先から聞こえてきた。
 近所の犬が吠えないのは、よく知った人物だからである。
 紳一が玄関の戸を開けると、バケツを提げた農作業服姿の男が立っていた。

「佐々木さん、おはようございます」

「やあ、紳一くん。今朝産まれたばっかりの卵さ」

 ほおれ、と佐々木繁(ささきしげる)がバケツを傾けると、初々しい朝採れの鶏卵がぎっしりと入っていた。

「いつもすみません」

「かまわんよ。そんなことより、春ちゃんはどうしてる?」

 繁は禿げかかった頭を撫でた。彼は小さな養鶏場の主人である。
 間もなく紳一に呼ばれた春子が、足音をひそめて玄関まで出てきた。

「おじさん、おはようございます」

 セーラー服姿の春子を見るなり、繁は目尻を下げてにやついた。

「春ちゃんはほんとうにべっぴんさんになったな。いくつになった?」

「十六です」

「そうかね。こんなにも器量よしじゃ、紳一くんも手放したくないだろう?」

「いやあ、そんなことは……」

 紳一は照れ隠しで笑う。

「高校を卒業したら、うちの鶏舎を手伝ってくれんか?給料だって春ちゃんしだいで色をつけることもできるからな。まだ先の話だから、返事はいつでもいい」

「考えておきます。おじさんのところの卵を食べて、ここまで育ったようなものだから」

 まったくその通りだと繁は思った。

卵のおかげで乳もふくらんだし、排卵をするようにもなったんだからな──。

 繁は股間をそわそわさせていた。何から何まで母親の紫乃にそっくりだと思った。
 そして、春子を犯してしまいたいと思っていたのだ。

 腹の底にたまった性欲は、もはや五十過ぎのものとは思えないほど、ぎらぎらと煮えたぎっていた。

「朝早くからじゃましたね。それじゃあまた来るよ」

 じゃあ、と手を振る深海親子を振り返りつつ、繁は畑に挟まれた農道を行く。
 季節の変わり目の風が、春子のスカートを揺らしていた。


ひとしずくの排卵の最初へ ひとしずくの排卵 11 ひとしずくの排卵 13 ひとしずくの排卵の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前