四-2
春子はまだ処女なのだろうかと紳一は思った。
暗がりの中で目も慣れてきた頃、それはよく見えた。
うっすらと生えた若草の下で小さな新芽を出し、貝割れした二枚の皮膚と、さらにその内側で口を閉ざす稚貝まで見通せる。
紳一はそこに口づけた。
「うくんっ……」
春子の声は色づいていた。
ぬめぬめした体液がそこに膜をつくり、紳一の口唇に絡みついて糸を引いた。
そこで初めて春子は嫌がる素振りを見せた。不潔な部分をさぐられるのが恥ずかしいのだ。怖い気持ちもあった。
紳一のほうも、言いたいことは奥歯に挟まったままだった。
春子はどんな心地を味わっているのだろうか。
痛くはないのか。
具合がわからない。
ここでやめてしまおうかとも思った。
ただ添い寝するだけで心が満たされるならそれでいい。
父と娘は一線を越えられない関係なのだ──。
紳一はやや浮かない気持ちでいた。
「お父さん……」
春子は甘ったるい声を出した。
「私はどうなってもいいから……、ちゃんと抱いて欲しい……。お父さんが好きなの……」
それはまだ乙女でいたいとしがみつくようでいて、はやく大人の体にして欲しいとすがるような、掴みどころのない言葉だった。
春子は紳一のすべてを受け入れたかったのだ。
愛しさがまた込み上げてきて、紳一は春子を愛し抜く決心をした。
か弱き割れ目に赤みが差している。指で押してやると、そこから汁気が溢れてくる。まるで果物の剥き実であった。
春子は快感をおぼえていた。相手が紳一だからこそ、地熱のような快感が湧いてくるのだ。
お父さんの女にして欲しい──春子は目で訴えた。
春子の女々をもらってやる──紳一は目で頷いた。
しとやかな春子からは想像できないほど卑猥なものが、くっきりと口を開けている。
紳一はそこにむしゃぶりついた。とぐろを巻いた舌で膣口の垢を舐めていく。
水浴びみたいな湿った音をたてて、春子の恥部もしだいに脆くなっていった。
春子は官能の声を上げた。
「ああ……ん……ああっ……ふん……」
乙女心に、何て破廉恥な声なのだろうと思ったが、呑み込むこともままならない。
春子はまた声を上げた。
そして紳一の顔が春子の股間から離れると、ふたたび乳のぜんぶをなぶり、陰唇のかたちに沿って指を割り込ませる。
盲目な愛撫でいじくられたなら、清純な乙女の芯であっても大人しくしていられなくなる。
春子の体が狂い出したのだ。
腰が浮き上がり、沈んだそばからまた浮いた。
紳一は目を見張った。こんもりと肉をつけた恥丘のわずか下に、潮を満たした貝がある。
紳一の指がそこを通っていった。
「んはあ……あああ……」
春子は違和感をおぼえて、あらぬ声を漏らした。かすかな痛みがあった。
紳一もまた、その窮屈な膣に気を配る。
こわしてはならない、ただその一心で指を慣らしていく。
粘膜が溶け出してくるようだ。
いつの間にやら中指は根元まで埋まり、春子の蕾をじゅくじゅくと押していた。
根掘り葉掘りといじくるほどに、膣の奥に広がりができていく。
抜き指、挿し指で、血の滲む赤潮が春子の中から垂れてきた。
春子の乳房も女々も、いつでも僕の目の届くところに置いておきたい。
いっそのこと夫婦になって、一日中でも交わっていたい──。
そうして前戯を終え、いよいよ青すじを浮き立たせた紳一の一部が、春子のおさまるところへおさまっていった。
春子が紳一を迎え入れたのだ。
ただの『負んぶ』や『抱っこ』では済まないことぐらい春子にもわかっていた。
背も腹もわからなくなるほど交わっているのだと思った。
ずっと思いを寄せていた父と一つになっている。離れられるはずがない。痛みにだって耐えられる。
春子は瞳に涙を浮かべていた。しあわせだった。
めまぐるしい情事の末に、紳一は春子の外で射精した。
白い絵の具を浴びたその体に、少女の面影はもうなかった。
肩で息をしながら、春子はため息をついた。
絶頂感があったのかどうかわからないでいる。
すべてが初めての経験なのだから無理もないと思った。
けれども紳一と抱き合ったことを悔やんではいない。
頼もしい父、愛する父がそこにいたからだ。
「春子」
「うん……」
「僕にも春子が好きだと言わせてくれ」
「うん……」
春子は感涙した。涙が止まらない。止める理由もない。
紳一が拭ってやったそばからまた涙が湧いてくる。
きっと紫乃も許してくれるだろうと、紳一は春子の体を引き寄せて抱きしめた。