君と共に逝きたい-2
「この季節は熱中症でやられちゃう方が多いから、人手が足りなくて結構立て込んじゃうんですよね。
でも、予定通りでよかったよかった。
では参りましょうか」
おっさんは、断崖絶壁のギリギリに座り込んでいた俺の腕をむんずと掴んだ。
「お、おい! ちょっと待て!
お前何者だ!? ホントに俺は死んだのか?」
掴んだ腕を俺に振り払われ、まくし立てられたおっさんは、少しうっとおしそうな顔でこちらを見た。
「そうですよ、あんたは死んだの。
ちなみに私は死者を来世に導く天使です」
しばし頭が真っ白になった。
こんな冴えない窓際族みたいなおっさんが天使?
「ふ……ふざけんなよ。天使ってもっと……」
金髪の可愛らしい少女のイメージしかなかったのに、家庭でも妻の尻に敷かれてそうなやせ細ったこのおっさんが天使だなんて……。
「仕方ないでしょ、そう言ったって事実なんだから。
あ、ちなみに私こういう名前です」
と、おっさんの姿をした天使はスーツの内ポケットから一枚の名刺を取り出して、俺に寄越した。
そこには「成仏促進機構 千葉支部 園田誠司(じょうぶつそくしんきこう ちばしぶ そのだせいじ)」とあった。