君と共に逝きたい-11
「俺……飛び込んで岩に頭ぶつけて死んだのか」
死亡動機の下に書かれた、死因なる所に目を移す。
そこには、“頭部を強く岩に打ったことに依るショック死”と書かれていた。
海に打ちつけられた衝撃や、岩に叩きつけられたときの激痛ははっきり覚えている。
でも次の瞬間、一気に意識は遠のいて痛みもすぐに消えた。
苦しまずに死ねた……うちに入ったのかな。
一瞬のうちに意識が無くなったから、芽衣子が無事だったのかもわからない。
芽衣子は生きていると、園田は言っていたけど、大怪我させてしまっただろうし、何より目の前で俺が死んでかなりショックを受けていると思う。
芽衣子が今、どんな気持ちでいるかを想像すると、俺はいてもたってもいられなくなって、
「園田! 俺、芽衣子に会いに行くぞ!
アイツはどこだ? 病院か?」
と断崖絶壁の淵から立ち上がり、園田に向かって親指をグッと立てた。
園田は心底めんどくさそうな顔で、思いっきりため息を吐いていたが、構うもんか。
今すぐ愛しの芽衣子の所に飛んで行って、俺を失った悲しみに打ちひしがれた彼女を優しく包み、慰めてやりたい。
「俺の言うこときかねえと、この申請書にサインなんかしてやんねえからな」
「そ、それは困ります! 成仏して頂かないと私の査定が下がってしまうんですよ……」
園田は深々と頭を下げて、“なんとかお願いします”と付け加えた。
……天使も大変なんだな。
なんか天使という仕事が、想像してたのよりもすごく人間くさくて園田が少し可哀想に見えたが、だからといって妥協はできない。
「だったら俺についてこい、今すぐ芽衣子のとこに飛んで行くぞ!」
俺は白い歯を園田に見せ、走り出していた。