君と共に逝きたい-10
「成仏申請書は書いておきましたから、あとは裏に書いてある規約をよく読んで、ご同意頂けたらここに手島さんのサインと拇印を下さい」
そう言って、園田はバインダーに挟んだＢ４サイズの紙とボールペンを俺に寄越した。
「何これ、まるでお役所仕事じゃん」
「しょうがないでしょ。成仏するにあたって同意の署名をいただかないと、後々文句をつけてくる悪質なクレーマーがたくさん出てくるんですから。
ホント人間って厄介な生き物ですよ」
裏面を見れば、まるで生命保険の約款のごとく細かい文字がビッシリ並んでいた。
こういう類のものは見るのも嫌だったので、園田に簡単に説明してもらった。
大まかな内容は、霊魂でいる間の行動に際しての制約だとか、成仏後に生まれ変わった新しい命はいかなる変更も認めないだとか、生まれ変わったあとの生活の保証について当機構はいかなる責任も負わないだとか、そういう事が書かれているらしい。
表を見れば、俺の名前や住所、生年月日、血液型、職業(無職だが)などのお決まり項目が丁寧な字で書き込まれていた。
さらにその下に、病死、自殺、他殺、事故死、その他というチェック欄が設けられていて、俺の場合は自殺の所にレ点が入れられていた。
そして、その横には志望動機ならぬ死亡動機欄があり、“恋人の浮気に依る一方的な無理心中”と勝手に記入されていて、俺は思わず苦笑いになった。