月経タイム 前編-4
ケンジは焦って二人の間のトレイを横にどかすと、マユミの前ににじり寄り、震える声で言った。
「ま、まさか、おまえ、に、妊娠したんじゃ・・・・。」
マユミは顔を上げて、力なく笑った。「だ、だいじょうぶだよ、ケン兄。心配しないで。」
「だ、だけど・・・」ケンジはマユミの両肩にそっと手を置いた。その手は少し震えていた。
「いつもより不安定だけど、ちゃ、ちゃんと高温期に入ってるし・・・。」
出し抜けにケンジはマユミに向かって土下座した。
「ごめん!マユ!ごめん!お、俺の、俺のせいだ!ごめん!ゆ、許してくれ、マユ!」
「ケ、ケン兄・・・。」マユミは狼狽して腰を浮かせた。
「ごめん!ごめん!」ケンジは床に頭を擦りつけながら必死で叫び続けていた。
「ケン兄、顔を上げて。」マユミはケンジの背中を抱き起こした。
ケンジの目は真っ赤になっていた。「俺、俺、おまえを妊娠させちまった!ど、どうしたらいいんだ・・。」
「まだ妊娠したって決まったわけじゃないよ。ケン兄。」
マユミの目を見つめるケンジの顔は、マユミが今まで見たこともないような憔悴しきった表情だった。
「お、俺、責任とらなきゃ、おまえに責任、とらなきゃ・・・。」
ケンジはひどくおろおろしていた。マユミはそんな兄の哀れな姿を見るに堪えず、固くなってうつむいた。
「マユ、俺、もうおまえとは二度とセックスしない。誓う!」
マユミは顔を上げた。「い、いやだ、ケン兄、これからも抱いてよ。」
「お、俺のせいでおまえの身体がぼろぼろになっちまう。ちゅ、中絶したりしたら、もしかしたらもう子どもが産めない身体になっちまうかもしれないんだぞ!」
「ケン兄が責任取ってくれるって言うのなら、これからもあたしを抱いて欲しい。」
「いや、もうだめだ。こんなこと続けてたら、おまえだけ不幸にしちまう。」
ケンジの目から涙がこぼれ始めた。
「いやだよ、ケン兄、いやだ、あたし、ケン兄にこれからもずっと抱かれたい、抱かれたいよ・・・・。」
マユミの目からも涙がこぼれ始めた。
ケンジはたまらなくなってマユミの身体をぎゅっと抱きしめた。ケンジの身体は、まるで高い熱を出しているようにぶるぶると大きく震えていた。
その夜から、ケンジはキスはおろか、マユミの身体には指一本触れようとしなかった。
ケンジは毎晩マユミの部屋を訪ね、床に頭を擦りつけながら何度もマユミに謝った後、すがるマユミを振り切って自分の部屋に戻っていった。
マユミはケンジの温かさが恋しくて、毎夜枕を濡らし、浅い眠りの夜を過ごした。