四つ葉のクローバー-12
「メグ、誕生日おめでとう。俺のプレゼント、つけてくれる……?」
不安そうに顔を覗き込んでくる陽介の問いに、涙で声が震えてうまく喋れない。
変わりに何度も頷いてあたしの気持ちを伝える。
そして箱の中からネックレスを出すと、留め具を外してあたしの首に手をまわした。
手探りで留め具をつける陽介。その手つきは女慣れしている陽介にしては、やけにおぼつかなった。
やがてなんとかネックレスをつけることができた陽介は、あたしの胸に光るそれを見て、
「うん、似合う」
と、満足そうに頷いた。
その笑顔を見ていたら、たくさんの想いが込み上げてくる。
「陽介……ありがとう……」
あたしは陽介の背中に腕を伸ばし、再び溢れる涙を隠すように彼の胸に顔を埋めた。
やっぱりあたしはこの場所が一番落ち着く。
自分の居場所を確かめるように、あたしは陽介の身体にしっかりしがみついていた。
「……メグ、四つ葉のクローバーの花言葉って知ってる?」
そんなあたしの髪を梳きながら、陽介は訊ねてきた。
花言葉なんて陽介の口から出てきたことが意外で、あたしは思わず陽介の顔をまじまじと見つめた。
「どうしたの、花言葉なんて陽介らしからぬ言葉……」
「いいから、知ってる?」
「ううん」
そもそもクローバーに花言葉があること自体知らないし。
そんなあたしにクスリと笑いかけた陽介は、
「『be mine』……私のものになって。って意味なんだってよ」
と、呟いた。
思わずクローバーの部分を指でなぞってしまう。
私のものになって。
そんな意味を込めて陽介はあたしにこれをくれたのだろうか。
「これよりも、もっと華やかなヤツがたくさんあったんだ。正直これは眼中になくて、他のヤツを買おうと思ってたんだけど、パンフレット見てたらこのネックレスのコンセプトっつーか、説明にこの花言葉が載っててさ」
ゴクリと喉を鳴らして陽介の次の言葉を待つ。
陽介は、クローバーのチャームをすくいあげてから、あたしの顔をジッと見つめ。
「今の俺の気持ちのまんまじゃんって、速攻これに決めちゃった」
ヘヘッとイタズラッぽく笑う陽介の顔は、次々に溢れてくる涙でよく見えなかった。