序章-16
「じゃあ、こっちにいらっしゃい」
菊代に誘なわれ、伝一郎は敷き布団の上に膝を付くと、ぴったり母親に寄り添った。
息がかかるほどの距離で見つめ合う二人。伝一郎の鼓動は辺りに聞こえているのではと思う程、強く、そして速く刻んでいる。
「先ずは、接吻から……」
「せ、接吻って?」
「お互いの、口唇と口唇を吸うのよ」
「く、口唇と口唇を!」
わが子の慌てぶりに、菊代はほっと胸をなで下ろす。「もしや級友の女の子と」という思いは、杞憂だったようだ。
「先ず接吻するの」
「そ、そう言う物なんですか……」
伝一郎は躊躇い勝ちに、菊代の口唇に吸い付いた。
「んっ……違うわ。もっと唇の先で吸うように……っん……そう。もっと力を抜いて……うんっ……っん……」
新しい世界へと踏み出した伝一郎。その一歩目は、素晴らしい物であった。
小さくて厚みのある口唇の感触は、柔らかくて気持ちいい。吸いつく度に奏でられる音が淫靡さを醸し出し、昂りを更に煽る。
それは菊代も同様で、無垢なわが子との接吻は、後ろめたさも相まって、技巧以上に感情を高みへと導いた。
「……っん……ふう、次は口唇を開いて……」
「うん……」
菊代の舌が、伝一郎の口腔内に押し入る。舌と舌が絡まり、時折、唾液を啜る音と熱い吐息が二人の耳幹に響く。
甘美なる刺激は次第に思考を痺れさせ、本能を浮き彫りにした。二人は益々、興奮の度合いを高め、口唇を重ね合わせたまま布団に横たわる。
仰向けの菊代に、伝一郎は覆い被さった。
「ふっ、うん……」
長い々接吻を終え、ようやく互いの口唇が距離を取った。
喘ぎながら見つめ続ける二人の姿は、最早母と子では無い。
菊代は、わが子との接吻によって、身体の芯が熱を帯びて行くのを覚えた。
「次は、おっぱいを吸ったり揉んだりするのよ」
「わかった。この前と同じだね」
「もっと優しくよ」
伝一郎の両手が横たわる母親の乳房を包み込んだ。教えられた様に、優しく円を描くように揉んだ。
しかし、それでも菊代は痛みき眉間を寄せた。
「……痛……もっと、優しく……」
「こ、こう?」
「そう……ここは、とっても敏感だから……あっ!……徐々に強く……」
「なんだか……硬くなってきた」
刻々と変わる感触を掌で感じ取り、伝一郎は好奇の目で弄り続ける。
「……んっ……気持ちよくなると、おっぱいは……硬くなるの……乳首も……乳首も摘まんでえ」
拙い動きながら、伝一郎の愛撫によって菊代の芯は、更に熱を増した──失したはずの情欲が燻り始めた。
紅潮したのは頬だけで無い。首筋から胸元まで、熱情の赤に覆われていた。