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「ガラパゴス・ファミリー」
【近親相姦 官能小説】

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序章-10

「母さま……綺麗」

 行灯の柔らかな灯りが、菊代の肌を照らし、女を晒け出す。陰影が肢体の曲面を殊更に強調し、その眺めは一種、神々しささえ感じさせる。
 その時、菊代は見た。裸の自分を凝視するわが子の中に、曾て愛した男の面影を。

 初めて契りを結んだ夜。男が見せた眼差しと、そっくりだったのだ。

「伝一郎……」

 もう、菊代の声に怯えは無い。直ぐに寝衣を整えると、姿勢を正した。

「そこに座りなさい」
「母さま……」
「貴方が母を、どんな目で見ていたのか解りました」

 凛とした母の声音によって、我に還った伝一郎。行った事の重大さに気付き、慚愧に耐えない。

「私は……貴方を、少し甘やかし過ぎた様ですね」
「……」
「今後は、この部屋に来てはいけません」
「で、でも……」
「勿論、風呂も一人で入りなさい」
「そんな!」

 菊代の厳しい罰は、母親を情愛する伝一郎にとって、重過ぎる物だった。
 金輪際、母の裸を見る事も肌に触れる事も許されない。普通の母子ならとうに通過している儀礼なのに、少年には、それらを失うなど考えられ無かった。

「か、母さまは、僕があんな事したから嫌いになったの?」

 何とか赦しを乞い、今まで通りの関係を維持して次の機会を狙いたい──そんなわが子の浅計を見逃す菊代では無い。

「何を言っているのです!来春には中学生になるのですよ」
「は、はい」
「中学での生活は、厳しく大変だと聞き及んでいます。だから今後は、わが家でも相応に厳しくして行きます!」
「わ、わかりました」
「解ったら、もう休みなさい」

 すっかり意気消沈した伝一郎は、そそくさと母親の部屋を出て行き、仕切り戸一枚で隔てられた隣の部屋に帰って行った。

(ああ……これから一人か)

 温もりの無い寒々しい布団。伝一郎はその中に潜り込み、自らの行動を鑑みた。たった一度の過ちによって、失った代償は余りに大きい。

(でも……)

 しかし、暗然とする伝一郎の意に反して、陰茎は腫れ挙がったままだ。
 母の柔肌から感じた温もりや匂い、それに感触が、欲情した身体が鎮まる事を妨げていた。

「ああ……か、母さま」

 抑えきれない伝一郎は、さっき迄の出来事を脳裡に思い浮かべ、自らの陰茎を強く握りしめる。

(あの眼……)

 菊代は、暗闇の中で天井を見つめて泣いていた。
 母である自分に情欲すると言う、畜生にも劣る道義心にわが子が蝕まれていた事が、情けなかった。
 あの子が出来損なってしまったのは、伝衛門と恋仲になったたせいだと、自分を責め立てる。


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