真相-1
何ヶ月か経った頃。
DVDレンタル店で、ある題名が目に止まった。
『蒼い影のセレナーデ』
どこかで聞いた題名だなと思った。どこで聞いたのか思い出せない。
私はストーリーやキャストを見た。
ヒロインは君賀緑(きみが みどり)という女優だ。
だが、その女優の写真がカバーにない。私は首を傾げた。
そしてそのDVDを棚に戻して店を出た。
気になっていたので私はネットで『君賀緑』を検索した。
私は君賀緑の検索結果を見て体が凍りついた。
君賀緑(きみが みどり)
本名 神埼美樹(かんざきみき)
舞台女優 弟は歌手の高殿登(たかどの のぼる)本名 神埼芳樹(かんざき よしき)
3才の頃から児童劇団に所属し演技派俳優の道を歩む。
舞台女優として数々の賞を取っているが、映画『蒼い影のセレナーデ』で最優秀主演女優賞を獲得。なお本作はその他にも脚本賞・監督賞と……
私はその先が読めなかった。
神埼芳樹とはパック旅行で会った、あの青年ではないか。
そして姉が映画関係だと言っていたが、演技の世界では高く評価されている女優だったのだ。
私は神埼青年が歌手の高殿登だということもショックだった。
だが、あの事故のニュースでは高殿登が事故に遭ったとは報じられていない。
事務所が伏せたのか?
それも不思議だが私は何故か君賀緑の画像が見たくなった。
弟の芳樹が自分に似ていてもっと綺麗だと言っていたからだ。
そして画像検索をして驚いた。
そこに映っていたのはミキの顔だった。
「えっ?」
私は思わず声を出した。どういうことなのだ?
数ヶ月前、私の部屋で激しく愛し合ったミキが君賀緑なのだ。
あのときミキは芸能事務所に売られてヤクザに抱かれそうになったと言っていた。
けれども君賀緑はきちんとした劇団に所属している。
いかがわしい芸能事務所と関わるような安物の女優ではない。
私は、ある画像を見て更に驚いた。
そこには君賀緑が仲間の劇団員と一緒に写っている画像があった。
その中に見覚えのある3人の顔があった。
笑顔で映っているので最初はわからなかったが、ミキを追いかけて来た3人のヤクザ者が君賀緑と仲良く映っていたのだ。