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パック旅行と受賞映画
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交流-1

ホテルの部屋に戻ると私は神埼青年を風呂に誘った。

「ああ、僕様は後で入るから、どうぞ」

そう言うとペットボトルを手に窓の方に気だるそうに歩いて行った。

私は浴衣に着替えると3階の大浴場に向かった。

風呂から戻ると神埼青年の姿はなかった。

1人の気楽さで私はストレッチをしたり体操をしたりした。

上半身裸になってステテコ一枚でやっていても軽く汗ばむ。

腕立て伏せを始めたときに神埼青年が戻って来た。

ドアの外で水木女史の声が聞こえたから、たぶん彼女と会っていたのだろう。

部屋に入って神埼青年が立ち止まったようだ。

少ししてから話しかけて来た。

「おっさん、すごい体だな。ボディビルかい?」

私は腕立てを続けながら、趣味で空手をやっているんだと言った。

もちろん体力をつけるためにウェイト・トレーニングもする。

君くらいなら軽く持ち上げられるよ。

すると神埼青年は私の横で腕立て伏せをしようとした。

「10回くらいなら、僕様もできるけど」

私は神埼青年の腰を持って少し持ち上げた。

腰を下げちゃ駄目だ。浮かすようにして胸が先に床に着くように。

私がレクチャーすると、たちまち悲鳴をあげた。

「うわーぁ、きついよ。本格的なのって難しいなあ」

5回もしないうちに音を上げてしまった。

それからちょっと一緒にスクワットをやったり、空手の型を教えたりして結構楽しく過ごした。

やはり男だから結構興味を持ってやってくれた。

汗かいたろうから、もう一度風呂に入りに行くことにしたが、彼は誘いをまたしても断った。

私が怪訝な顔をすると、下を向いたまま呟いた。

「僕様、胸が陥没してるから人前で入浴しないんだよ。

この部屋のバスルーム使うから、おっさん1人で行ってくれないか」

私は思わず胸を見た。特に窪んでいない感じだった。

私の視線を感じて神埼青年は、消え入るような声で言った。

「うまく隠してんだよ。だから見るなよ」

私は悪いことをした気になって、そのまま大浴場に行き汗を流して来た。

戻ると神埼青年はまだバスルームの中にいた。

窓を開けて涼んでいるとしばらくして出て来た。

浴衣姿になっていたが、神埼青年が意外と美青年なのに気がついた。

風呂上りのほの赤い顔が、男でもどきっとする色気があるので、水木女史が参るのも無理はないと思った。

喩えていうならさしずめ『役者のような良い男』というのだろう。

初対面の時から暫くは、相手も構えていたところがあって気づかなかった。

だがこうやって少し話して距離が近くなった時それがわかったのだ。

眉毛なんかをきれいに剃って整えたり、髪形も格好良くすれば、ちょっとした男性モデルに変身するかもしれない。

なんせ背が170cmくらいだから男としてはそんなに高くはないのだろうが、肩幅もあって、足も長く全体のスタイルが良い。

顔も小さいから実際よりは背が高く見える。

「おっさん、じろじろ見るなよ。変な趣味あるんじゃないだろうな?」

悪い悪い。神埼君が意外と良い男だから、つい見とれてしまった。

どちらかというと女泣かせって感じだな。

「女なんか泣かせたことないよ」

おいおい。褒めたんだよ。黙って褒められていりゃ良いだろうが。

「そうか、僕様褒められたのか。そりゃあ、ども……」

ちょっと猫背になってまたゆらゆら歩くと窓側の椅子に向かった。

よほど窓側が好きらしい。



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