パック旅行-2
それからバスでの移動が始まった。
別の旅行社の企画に沿ってガイドが今後の日程について案内をする。
そしてときどきLT社の場合はと、付けたしのように説明する。
見学場所でのトイレタイムの時だった。
バスの外で神埼青年が水木女史と向かい合って何か喋っている。
背の高い神埼青年は少し猫背になってポケットに手を突っ込み水木女史を見下ろすように喋っている。
口の片端で薄笑いを浮かべて、何か意地悪なことを言っているらしい。
何故なら水木女史が困ったような顔つきになっていたからだ。
私がバスに入るとき、神埼青年の「冗談だよ」という声が聞こえた。
まるで猫がネズミをいたぶって面白がっているようだ。
だが若い男女の間のことだから余程のことがない限り様子を見ることにした。
案の定、神埼青年は後半になって水木女史と親しくなっていったようだ。
それも水木女史の方が熱を上げているのが一目でわかった。