男友達と素顔の私-13
「……夏織?」
「は、はいっ」
いやだ、いやだ!なにも聞きたくない。
こんな時、男がなにを言うかだなんてわかりきってる。
言い訳なんて、女々しい言葉なんていらない。
ただ黙って抱いてくれただけで、それだけで私は満足だったのに……
「もし、出来ちゃってたら……」
「……」
「結婚しよう」
「……は?」
「もし出来てなかったら……」
「ちょ、ちょっと大樹?」
「結婚を前提に俺と付き合ってくれないか?」
「……え? えぇっ!?」
私はその予想の斜め上をいく言葉に激しく動揺した。
もしかすると、今日いちばんに大きな声を出したかもしれない。
結婚ってなに?大樹は突然なにを言っているの?
行きずりとまでは言わないまでも、所詮は酔った勢いの過ちじゃない。
もちろん私はこんなことはじめてだったけれど、
大樹なんてそれこそモテるんだから、よくある出来事じゃないの?
「もしかして…… まだ酔ってるの?」
「んなわけねぇだろ……」
「あ、男の責任ってヤツ?や、やだなぁ…… そんなのいちいち気にしてたら……」
「ちげぇよ!その都度こうして結婚申し出てたら身体がいくつあっても足りねぇわ!」
「……いくつあっても足りないくらいなんだ?ふ〜ん?」
「いやっ まて!それは誤解だっ」
「誤解って…… いま自分で言ったことじゃないっ」
私は頬を膨らませながら、思わず大樹の頬を指でつねった。
まるで青臭い付き合いはじめのカップルみたいに。
「……で?」
「な、なによっ」
「だから、返事はどうなんだよ?」
「へ、返事って?」
私は惚けたふりでそっぽ向こうとするも、
両手で頬を抑えられては、視線さえもはずさせてくれない。
「だ、だって!そんな急に言われてもっ」
「急かな?長い付き合いなんだ、とっくに察していただろ?」
「さ、察するって…… なにを……」
「なんだよ、いまさら言わせるつもりかよ?」
そう言っては目を閉じ私に唇を重ねる大樹。
抗う理由なんてもちろんない。
むしろ受け入れるように、はしたなく自ら舌を絡めてしまっている私がいる。
「おっぱい……おっきくないよ?」
「俺がおっきくしてやんよ」
「こう見えても結構ヤキモチ妬きなんだからね?」
「知ってるさ…… どれだけ顔付き合わせてると思ってるんだよ」
「で、でもっ 知らないこともいっぱいあるかもしれないじゃないっ」
「ああ、あんなにエッチな女だったとはさすがに…… いてっ」
唇を噛みしめながらポカリと大樹の頭を叩く私。
あんなにエッチな女だったのは、いったい誰のせいだと思っているんだ。
私は大樹に背中を向けると、手をぎゅっと握り締めたまま眠りについた。
朦朧とした意識のなかベッドに横たわる私。
太くて逞しい二本の腕が背中越しに胸元をまさぐる。
持ち上げるようにやさしく包み込む大きな手の平。
ゆっくりと揉みしだくその手つきは、
いつにもまして、なんだかとても気持ちいい。
「……気持ちいいか?夏織」
「んっ すごい……気持ちいい」