黒の他人<前編>-12
ゆっくりと加奈の右手が下腹部へと移動する。
俺の目をじっと見つめながら、見えないように必死で身体を俺に近づけながら。
「どの指でしてるんだ?」
「……な、中指……です」
「一本だけでか?」
「は、はい……」
「本当にか?」
「…………たまに薬指を添える事も……あります」
少しずつ俺の質問に答えはじめる加奈。
恥ずかしさに顔がすっかり歪んでる。
「ゆっくりと触ってみな?」
「…………んっ」
「どうなってる?」
「……」
「教えてくれよ?どうなってるんだ?」
「…………ぬ、濡れて……ます」
そう言って加奈は唇を噛みしめながら少し涙目で俺を見つめた。
「いつもしてるように動かしてみな?」
「……あっ んっ」
「もっとだろ?もっといつもみたいにするんだよ」
「…………んっ あっ んんっ」
加奈は堪えきれず目をギュッと閉じたかと思うと、少しずつ唇を開き息を荒げはじめた。
「いいぜ?もっともっと気持ちよくなれよ?」
「やっ んんっ はぁっ あぁっ」
「どうした?ちゃんと自分でしてたからだって……証明してくれるんだろ?」
「んっ はぁっ やぁっ あぁっ……ん」
小刻みに腰を揺らしながら、すっかり行為に陶酔した様子の加奈。
艶めかしい嬌声だけが部屋中に響き渡る。
どうやらもう、俺の言葉に返事をする余裕も無いみたいだ。