そこにある愛-2
「茜(あかね)〜、これからカラオケ行かねえ?」
聞き慣れた少ししゃがれた声があたしの背中に投げかけられ、内心チッと舌打ちする。
またコイツは性懲りもなく話しかけてきて……!
あたしはクルッと振り返って、露骨に迷惑そうな顔を奴に向けた。
「なんであんたなんかとカラオケに行かなきゃいけないのよ」
視線の先には、堅太りのチビ男のニッと笑う姿。
スポーツ刈りのような角刈りのような不思議な髪型、歯並びの悪い大きな口、少し離れた目、そしてシーズンごとに2万円を握り締めユニクロで着る服をまとめ買いするというファッションセンス。
あたしは、こんなダサ男を見ると心の底からイライラする。
「なんだよお前、大学入ってから変わっちまったなあ。
今日も似合わねえフリフリの服なんか着ちゃってさ。
高校の時はジャージが私服の、化粧っ気のない素朴な田舎娘だったのに」
白いのチュールスカートに、デニムジャケットで決めたあたしの服装にいつものごとく難癖をつけてきたダサ男を、あたしはキッと睨みつけた。
「ちょっと、元気(げんき)!
これ以上あたしの過去をほじくり返すようなこと言ったら、マジぶっ殺すからね!
それと、ダサいくせにあたしの服にケチつけんの止めてよ、ムカつくのよ!」
せっかく田舎から上京してきて、オシャレで充実した大学生活送ろうと思っていたのに、なんでよりにもよってクソダサ元気と同じ大学に通う羽目になるとは……。
あたしは額に手をあて、嘆くように首を横に振った。