そこにある愛-19
あたしは元気にその何倍もの暴言を吐いてやったら、奴はさらに笑いながらブスやデブを連呼し、あたしのファッションセンスやメイクにまで暴言を吐いてきた。
でも不思議だ。元気にならどんなに暴言吐かれても悪意を感じない。
誉さんよりもっとひどいこと言われているのに、あたしもいつの間にか笑いながら口喧嘩をしていた。
きっと、元気の優しさを無意識に感じ取っているからなのかな。
男と女の友情なんて成立しないって思っていたけど、こういう関係も悪くないかも。
次第にお互い言いたいことがなくなって、黙り込んでしまった。
でも、なぜかお互いニヤニヤが止まらない。
「あんたって、ホントムカつく!
あー、ムカつき過ぎてお腹空いてきた。
元気、なんかおごってよ」
「図々しいなあ、でも今日だけは多めに見てやるか。
オシャレなカフェでも行きてえか?」
元気はイヤミっぽく、あたし達に不釣り合いな店を提案して来た。
でも、あたしはやっと気付いた。
背伸びしなくても居心地のいい場所がちゃんとあることに。
「吉牛大盛で。あとそれ食べたらカラオケね。
今日はあたしが長渕メドレーするから、あんたは長渕歌わないで」
「おい、カラオケはいいけど、それは譲れねえぞ」
元気が眉をひそめてあたしを睨んだ。
そんな奴を横目に、あたしは得意気な顔でフンと笑ってから、「巡恋歌」のワンフレーズを長渕のモノマネしながら歌って見せた。
あたしが今まで隠していた特技に、呆気にとられる元気。
「ね、あんたよりあたしの方がうまく歌えるんだから」
「……今日だけだぞ」
悔しそうに舌打ちした元気の顔が、やけに可愛く見えた。
〜end〜