そこにある愛-17
…………はい?
薄く目を開ければそこにはいつものもっさり笑顔。
「わりいけど、お前とどうこうなりてえなんて一度たりとも思ったことがねえ」
いつもと変わらない元気の口調に、唇がワナワナ震えだした。
振られた! こんなもっさり男に振られた!
しかももっさりダサ男のくせに、誉さんみたく“面食いだから”って言いやがった!
さっきのカフェでの出来事が思い出され、あたしの怒りは最高潮に達した。
瞬間湯沸かし器みたいに一気に頭が熱くなってくる。
「もういいよ!
どいつもこいつもあたしをバカにしてえ!
どうせあたしはブスでデブで男になんて一生縁のない勘違い女よ!!」
涙をボロボロ流しながら元気の身体をドンッと突き飛ばし、さらに元気の胸ぐらを掴み取った。
さすがに元気も焦ったのか、暴れ出したあたしを宥めるごとく、グッと抱き締めてきた。
「おい、落ち着け! まずは話を聞け!」
「うるっさい! 殴らせてくれないなら帰れ、このもっさり男!」
「俺は、お前に恋愛感情は持ったことねえけど、俺の中ではお前はいちばん大事な存在なんだよ!」
元気の腕の中で暴れていたあたしは、その言葉を聞くとなぜかダラリと力が抜けていった。
あたしの荒い鼻息だけが静かな部屋に響いていた。