そこにある愛-16
「あ、茜……?」
驚いたような、戸惑ったような、元気の声。
それでも構わずあたしは続ける。
「さっきはごめん、あんなひどいこと言っちゃって……。
あたし、いつもそばにあんたがいてくれてたから、その大切さに気付かないでここまで来ちゃったんだ。
傷ついて、自分の身の程知って、あたしは初めて自分の大切なものに気付いたの。
あたしは……元気が……」
あたしがそこまで言うと、元気はあたしの腕をそっと引き離し、クルッと振り返った。
見つめ合うと心臓が一気に高鳴る。
もさいと思っていた元気の顔も、よく見りゃ愛嬌たっぷりだ。
少し離れた目は、実は睫毛が長くて可愛くて、ぽってりとした厚手の唇は、キスしたら気持ち良さそうで、肌は浅黒いけど実は赤ちゃんみたいにツルツルで、思わず頬ずりしたくなる。
不意に胸がドクンと高鳴る。
ああ、気付かなかっただけで、あたしを包んでくれる愛は手の届く所にあったんだ。
いつにない元気の真剣な顔に、さらに緊張感が高まる。
そして彼はあたしの肩をグッと掴んだ。
来るか? あたしのファーストキス……!
覚悟を決め、ゆっくり目を閉じると、心地よい元気のしわがれた声が響いてきた。
「茜……。俺な、めっちゃ面食いなんだ」